<全国高校野球選手権:佐賀学園5-1旭川実>◇9日◇1回戦

 北海道勢は初戦で敗れ、史上2度目の南北北海道対決も夢に終わった。北北海道代表の旭川実は、頼みのエース鈴木駿平(3年)が踏ん張れず9安打4失点で5回途中降板。打線も9回に1点を返すのがやっとだった。

 旭川実の鈴木は、交代を告げられると天を仰いだ。5回途中で9安打4失点。3年間の思いをマウンドにぶつけた83球だった。甲子園での登板が全国初経験だったが、大舞台でも臆(おく)することなく立ち向かった。「抑えてやろうと思ったけど、チームに貢献できなかった」。応援団に一礼すると泣き崩れ、チームメートに肩を抱えられながら引き揚げた。

 第3試合の北照戦が雨で中断し、2時間遅れで試合が始まった。1回に安打と守りのミスでピンチを招くと、甘く入った球を狙われ、先制点を許した。その後も高めに浮いたボールをとらえられ失点を重ねた。岡本大輔監督(37)は「ストライクとボールがはっきりしていた。でも彼が北大会で好投しなかったら、ここまで来られなかったので、よくやってくれた」とエースをねぎらった。

 中学3年で旭川実の練習に参加した時は、体も細くて体重は60キロ前半。実績もなく、目立つ選手ではなかった。だが、野球に対する熱意だけは誰にも負けず、最後の夏に花を咲かせた。スタンドで観戦した入学当時を知る込山久夫前監督(64)は「最初はひょろひょろだった。何人も投手がいる中で抜けた存在になるために、いろいろ考えたんだと思う」と成長した姿に目を細めた。

 チームは最後に意地を見せた。9回の攻撃前、細坂主将が「打たないと勝てない。すべてをぶつけて意地を見せよう」とナインを鼓舞。代打の原が左前打で出塁し、代走で出場の佐々木がすかさず盗塁を決めた。途中出場の金丸が適時打を放ち、3年生で1点をもぎ取った。ネクストサークルで試合終了を迎えた細坂は「みんなの意地。チームのために打とうと思っていた」と逆転を信じて打席が回ることを願った。

 甲子園初出場の95年夏にベスト8入りし、全国をわかせた「ミラクル旭実」の再現はならなかった。しかし、最後にその片りんは見せた。チーム2人の2年生として出場した渡部は「菅野と僕は経験できたので、今のチーム以上にレベルアップしたいです」と力を込めた。3年生の意地を受け継ぐ新チームが来年、甲子園の忘れ物を取りにいく。【石井克】