オープン戦たけなわのこの時期は、まだ年俸調停権を持たないメジャー1~3年目の選手が今季の契約を結ぶ季節でもあり、先日もヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(26)やエンゼルス大谷翔平投手(24)の契約が話題になった。17年に52本塁打で本塁打王に輝き新人王を受賞したジャッジは3年目の今季、年俸68万4300ドル(約7530万円)、昨季新人王で2年目の大谷は65万ドル(約7150万円)。すでにチームの中心的存在であり若きスターとなっても、格安の年俸だ。

年俸調停権を得る前の選手の年俸の仕組みはどうなっているのか? 今回のコラムでは、それについて触れてみたい。

まずメジャー1~3年目の選手は、年俸交渉の余地をほとんど持っていない。つまり選手の年俸は球団側の意向でほぼ決まり、メジャー1年目は規定の最低年俸かそれに近い額になるのが慣例になっている。2、3年目の年俸は、球団ごとに独自の査定方式があり、だいたいはサービスタイム(メジャーでプレーした日数)が大きな目安になるという。例えばカージナルスは、このサービスタイムにWAR(ウィン・アバウブ・リプレースメント)というセイバーメトリクスの指標を加味する査定方式をとっていると地元メディアにあったが、詳細を明かしている球団はない。

年俸が決まり、選手がこれに同意してサインをすれば契約成立。ただし選手が納得しなければ、サインをしなくてもいい。その場合、球団が強制的に契約を更新することができるのだが、アストロズなどはサインをしなかった選手とは最低年俸で更新するのを慣例にしてきたそうだ。アストロズほどではないが、サインをしなかった選手とは、相場より安く契約を更新するケースが多い。このようなシステムになっているため、3年目までの選手の多くは、球団側の提示を受け入れることになる。

だが今年は、サインを拒否して反発する選手が続出した。昨季最多勝でサイ・ヤング賞を受賞したレイズの左腕ブレーク・スネル(26)は3年目の今季サインをしなかったため、57万3700ドル(約6310万円)の格安で更新され、代理人を通じて球団を批判する声明を発表している。アストロズで昨季ブレイクし3年目になるアレックス・ブレグマン内野手(24)もサインを拒否し「球団の提示する額に失望した」と発言、カージナルスの2年目先発右腕ジャック・フラーティ(23)もサインをせず「全員が同じルールの下でやっているのは分かっているが、このシステムが素晴らしいとは思えない」と発言している。

今後、反発する選手がさらに増えれば、このシステムも変わっていくかもしれない。ちなみにジャッジや大谷は合意して「サイン」しており、強制的な更新は「リニュー」と呼んで区別しているため、米メディアを注意深く読むと誰がサインで誰がリニューか分かる。【水次祥子】

(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)