今季のメジャーは、デッドボールや危険球まがいの球が発端であわや乱闘というもめ事がずいぶん多い。

4月17日のホワイトソックス-ロイヤルズ戦では、ホワイトソックスのアンダーソンが通算50号本塁打を放った際に派手なバット投げをした次の打席でぶつけられ、あわや乱闘。4月22日のメッツ-フィリーズ戦では、フィリーズ投手陣がメッツ2選手に死球をぶつけ、翌日の試合でメッツのレームがフィリーズ主砲のホスキンスに頭をかすめる危険な球を投げて不穏な空気になった。

5月3日のマーリンズ-ブレーブス戦では、ブレーブスのガウスマンが打席に入った投手のウレーニャに故意にぶつけたとして退場処分。同9日のヤンキース-マリナーズ戦では、ヤンキースのハップ投手がマリナーズの1番打者ゴードンの右手首に速球を直撃させ、同11日のレイズ-ヤンキース戦では、レイズのチリーノスが今季好調の強打者ボイトの肩にぶつけて、いずれも緊迫した雰囲気になった。少し思い返すだけでも、これだけある。

今季のデータを調べると、開幕から5月16日までに行われた全1290試合で死球トータルは522個に上り、1試合平均約0・405個となる。昨季は全4862試合で1922個と1試合平均約0・395個であり、やはり死球が増加傾向にある。

米ニュースサイト「ファイブサーティエイト」が5月10日付で、その点に注目した記事を掲載していたのだが、それによると1試合平均0・4個以上のデッドボールは1900年以降でトップの量産ペースだという。

これだけデッドボールが増えているのは、内角攻めが増えているせいもある。先日、打者として復帰したエンゼルス大谷翔平投手(24)が、昨季より内角高めを攻められていると話題になっていたが、大谷だけでなくメジャー全体で内角攻めが増えている。

MLB公式のデータサイト「ベースボール・サバント」によると、今季ここまで投げられた全投球のうち約32%が内角(ボール球も含む)で、データ取得が可能となった08年以降で最高率となり、08年と比べると3%以上増加しているという。

内角攻めが増えているのは、昨今はやりの「フライボール革命」の影響もあるだろう。角度をつけて本塁打を狙う打撃に徹する選手や球団が増え、実際に今季の本塁打は1試合につき2・6本と記録的なペースだという。投手は内角攻めでストライクゾーンを広げ、これに対抗。結果として死球増につながっている。最近は投手の球速も上がっているので、デッドボールによる打者の負傷も増えるかもしれない。シーズンを通して打者に専念する大谷には、くれぐれも気を付けてほしいところだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)