今季もしMLBが開幕するとしたら、選手全員がマスクを装着し、ソーシャルディスタンシング(社会的距離)を保つため、球審はホームプレートから遠く後ろに下がって立ち、ロボット審判による判定が行われるかもしれない。とにかく通常のメジャーの試合とは、まるで違うものになる可能性が高そうだ。

まず、シーズンが開幕できたとしても短縮されることはほぼ確実だ。その中で1試合でも多くの試合をこなすために、週に複数回のダブルヘッダーを開催。ハードな日程になるため、そのダブルヘッダーがメジャーではかつてなかった7回制になるかもしれない。延長戦も通常のメジャーの試合なら決着がつくまで15回でも20回でも試合を続行するが、負担を軽減するため特別ルールになる可能性がある。ドジャースの強打者ジャスティン・ターナー(35)は、延長が10回を超えた場合は、各チームから代表3選手ずつを選んで本塁打競争で勝敗を決めてはどうかと提案している。

少なくとも開幕当初は無観客、場合によっては今季すべての試合が無観客で行われる可能性も伝えられている。開催地は各球団の本拠地球場ではなく、アリゾナ州だけで行われる可能性が出ている。そもそも無観客なら本拠地の都市で開催する必要がなく、これは合理的といえる。

試合中にマスクを着用する可能性もある。そもそも欧米では日常でマスクをするという習慣がなく、マスクを着けることに大きな抵抗感があるため、選手の間では議論を呼んでいる。メジャーリーガーは紙たばこ愛用者が多く、そのせいで試合中でもグラウンドに頻繁に唾を吐くことが多いため、マスクが邪魔だという理由で嫌がる選手もいる。ドジャースの救援右腕ジョー・ケリー(31)は「唾を吐くたびにマスクを上げたり降ろしたりしなければならないし、手で触るので意味がなくなる」と米メディアに意見を述べていた。一方でダイヤモンドバックスのニック・アーメッド内野手(30)が「試合ができるならマスクでも何でも受け入れる」と発言するなど前向きな声もあり、新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては、選手のマスク着用が現実のものとなるかもしれない。

ロボット審判は、本来は今年のキャンプ数試合で実験的に行われるはずで、レギュラーシーズンで導入する予定はなかった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の非常事態となり、ロボット審判導入はソーシャルディスタンシングの観点からも有効だという意見がある。

7日付のESPN電子版によると、MLBと選手会、それに米国政府は、野球の試合を再開することにより社会を平常に戻していくことの大事さをアピールするとともに、試合を通して他者との距離を取るなど感染を広げないためにするべきことの啓発をしたいと考えているようだ。米プロスポーツの中で、野球が先陣を切って復活する可能性は高そうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)