エンゼルス大谷翔平投手(26)が二刀流で歴史を刻む活躍を続けているが、ファンやメディアだけでなく、他球団の選手からも好感を持たれているのが印象的だ。

レンジャーズのブロック・ホルト内野手(32)やレイズの先発右腕タイラー・グラスノー(27)、ヤンキースのエース右腕ゲリット・コール(30)が「僕はオオタニの大ファン」と話しており、エンゼルスと対戦する前に「直接見るのが楽しみ」と口にする選手もいる。レイズのマイク・ブロッソー内野手(27)は大谷を「physical specimen(フィジカル・スピーシメン=肉体の標本)」と表現していたが、つまり標本になれるほど肉体的には「完全体」ということなのだろう。選手たちは、大谷の身体能力のすごさに圧倒されている。

それはなぜかというと、試合そのもののパフォーマンスはもちろんのことだが、1つには試合に出るまでの準備がいかに大変かを選手たちが熟知しているからだと思う。特に先発投手にとっては、登板後のリカバリー(疲労からの回復など)にかなりの労力を費やしている。

これまで長年、メジャーの選手を取材してきて、リカバリーの大変さに苦労する投手をたくさん見てきた。少し古い話になるが、アスレチックスの取材によく通っていた2005年、当時エースだった先発左腕バリー・ジト(当時27歳)も、やはり登板後の体のリカバリーに悩んでいた。何かいい方法はないかとさまざまなことを試し、ヨガを取り入れたエクササイズなどを行っていた。それでも年齢とともにリカバリーのスピードは如実に遅くなり、中5日なら好投するが中4日だと大崩れすることが多くなった。

リカバリーを重視し、登板間の負担を軽くするために、ブルペンでの投球練習を一切行わずに次の登板に臨む投手もいる。ほとんどの先発投手にとって登板翌日はリカバリーデーで、投手によっては試合前の練習時間にはフィールドに一切出てこない場合もある。フィールドに出ないということは、普段やっているキャッチボール、ダッシュやラン、打撃練習中の球拾いにも参加しない。そうやってリカバリーに集中する。

ところが大谷は、先発登板の翌日にも打者として試合に出場し本塁打などを打ってしまうのだから、他の選手にとっては驚きだ。大谷のフィジカルに対して、一体どうなっているのだという素直な驚きを持ち、純粋な尊敬の念で見ているのだと思う。大谷に興味津々の選手が多いのも納得である。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)