WBCは米マイアミに舞台を移してこれから準決勝と決勝が行われるが、東京でのラウンドを振り返ると、やはりチェコ代表を抜きにしては語れない。

国内的に野球は“超マイナー”というヨーロッパの小国から来た選手たちは、いったいどんなプレーをしてどれくらいのレベルなのか誰も分からなかった。ふたを開けてみると、好守備と力強いスイング、堅実なプレー、野球にかける情熱、周囲に対するリスペクトの姿勢が伝わってくる素晴らしいチームだった。

チェコ国内ではWBCの試合がテレビ中継され、チェコの野球ニュースサイト「Milujeme Baseball」によると、11日の日本-チェコ戦は最多の24万人が視聴したという。チェコの人口は昨年の同国統計局の集計で1051万人なので、単純計算で全国民の50人に1人以上が見たということだ。現地午前11時開始の試合で、なじみのない野球というスポーツをこれだけの人が視聴したのだから、その注目ぶりが伝わる。チェコ戦4試合のトータル視聴者数は、のべ84万人だったという。

野球が盛んではなく、ほとんどが仕事をしながら野球を続けているチェコの代表選手は、きっと他のスポーツをしていた人が10代の後半くらいから野球に転向したようなケースが多いのだろうかと思っていたが、それもまったくの間違いだった。選手たちにいつどのように野球を始めたのかと聞くと「物心ついた6~7歳から始めた」という返事ばかりだった。「父がずっと野球をやっていたから」「兄が野球をやっていたのでその影響で」と、野球を始めたきっかけは日本や米国の選手と変わらない。チェコではNHLのピッツバーグ・ペンギンズで活躍したヤロミール・ヤーガーというアイスホッケーのレジェンドがおり、イングランド・プレミアリーグやブンデスリーガでも活躍したトマーシュ・ロシツキーらサッカーの名選手も輩出するなどアイスホッケーやサッカー人気が圧倒的。だが主将のペテル・ジーマ内野手(33)は「野球一筋でやってきた。サッカーやホッケーをやっている選手をうらやましいと思ったこともない」と話していた。

代表選手たちの願いは、チェコ国内でもっと野球が浸透し人気が高まること。その目標は今回のWBCで1歩近づいた。次の大きな舞台となるのは、今年9月にチェコの自国開催で行われる16チーム参加の野球ヨーロッパ選手権。その大会も国内でテレビ中継されることが決まったという。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)

チェコの帽子をかぶり米国マイアミに到着し、荷物を運ぶ大谷。後方左から近藤、源田、ダルビッシュ(撮影・菅敏)
チェコの帽子をかぶり米国マイアミに到着し、荷物を運ぶ大谷。後方左から近藤、源田、ダルビッシュ(撮影・菅敏)
チェコのハジム監督(2023年3月13日撮影)
チェコのハジム監督(2023年3月13日撮影)
11日チェコ戦でサトリアの前に空振りの三振に倒れる大谷
11日チェコ戦でサトリアの前に空振りの三振に倒れる大谷
11日、日本対チェコ チェコ先発のサトリア(撮影・前田充)
11日、日本対チェコ チェコ先発のサトリア(撮影・前田充)