日の丸を背にプロテクターを外すイチロー(2011年4月22日撮影・菅敏)
日の丸を背にプロテクターを外すイチロー(2011年4月22日撮影・菅敏)

米国シアトルのファンは、イチローがメジャーでプレーする最後の姿を見られなかった。東京での引退表明をどう受け止めたのか、マリナーズの本拠地Tモバイル・パークを訪れていたファンに聞いた。51番のユニホームを着たファンの1人は、イチロー引退の知らせを聞き「悲しかった。泣いたよ」。何度も涙をぬぐったという。だが「彼にとって良かった。引退にふさわしい形だった」。チームメート、家族や知人、母国日本のファンに見守られた花道に納得がいった。

シアトルでも、イチローは特別な存在だった。あるファンは興奮気味に「ベストプレーヤーだね。マイケル・ジャクソンと、マイケル・ジョーダン(ともにMJ)をミックスさせたような感じの存在。ダブルMJ、いやそれ以上だ」。音楽界で言えば世界的なレジェンドと、バスケットボール界では神様とも呼ばれる2人のスーパースターになぞらえ、イチローの立ち位置に敬意を示した。

また、別のファンは「ジャッキー・ロビンソンのように、メジャーの野球を変えた」と言った。黒人初のメジャーリーガーとして米球界の道を切り開いたロビンソン氏。後に、同氏がメジャーデビューした4月15日は04年から「ジャッキー・ロビンソンデー」と呼ばれるようになった。同じように日本人初の野手として、メジャーに新しい風を吹き込んだイチロー。ロビンソン氏と同様に、数々の功績は米国でも語り継がれていくことだろう。

10歳の頃から19年間、イチローに魅了されてきたシアトル在住のリチャードさん(29)は、今後もイチローファンであり続ける。「グラウンド上であろうがなかろうが、これからもマリナーズを助けてくれると思う。僕はずっと彼のサポーターだ」。引退しても、イチローへのリスペクトは変わらない。シアトルのファンを代表するような、そんな言葉だった。【MLB担当=斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)

「イチロー」コールで待ちわびたファンの前に姿を見せ、場内一周するマリナーズのイチロー(2019年3月21日撮影)
「イチロー」コールで待ちわびたファンの前に姿を見せ、場内一周するマリナーズのイチロー(2019年3月21日撮影)