逆境があるからこそ、それを跳ね返すことに夢がある。巨人菅野智之投手(31)の今季のメジャー挑戦はかなわなかった。21年に取得条件を満たす海外FA権を待たずに、ポスティングでのメジャー移籍を望んだ。1年でも早く夢舞台に立ちたい-。その強い気持ちは、目前で壁に阻まれた。

来年、再挑戦となれば、メジャー1年目の開幕は32歳で迎える。心強い先輩メジャーリーガーたちの功績がある。菅野と同じくポスティングシステムで交渉不成立となり、海外FA権を行使してメジャーに挑戦した岩隈久志は1年目に31歳を迎え、32歳となった2年目で14勝、3年目では15勝を挙げ、マリナーズに7年間在籍した。

今回の交渉期限前から巨人残留の可能性を指摘していた米メディア「ジ・アスレチック」のローゼンタール記者は、昨シーズン最多勝で現在34歳のダルビッシュ有、32歳の前田健太、田中将大らを例に挙げ、日本人投手が年齢を重ねても好投を続けていると捉え、前向きな見方も示していた。

移籍市場の停滞やコロナ禍での交渉の難しさなど、さまざまな状況が重なった。だが、細かな要因よりも菅野にとって重い事実は、元日に渡米し、直接交渉に臨むほどメジャーへの強い希望があっても、通じなかったことではないだろうか。そして、そこからどうはい上がり、夢へ向かっていくのか。今後の歩みが菅野の生き方を示す。それが人々にとっても、夢をかなえる道しるべになると思う。【MLB担当=斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)