恋愛に年の差なんて、とは言う人もいますが、果たして勝負事では…。

 エンゼルス大谷翔平投手が1日(日本時間2日)、メジャー最年長選手、レンジャーズのバートロ・コローン投手(45)と対戦しました。公式戦では2回目の対決となった第1打席。右中間を深々と破る二塁打を放ち、試合後の大谷は「自分なりの仕事ができたんじゃないかと思います」と、振り返っていました。

 2人の年齢差は22歳。言うまでもなく、同じグラウンドに立ってしまえば、年齢は関係ありません。

 勝つか、負けるか-。

 結果だけが評価される世界です。

 その一方で、メジャー通算21年目、11球団を渡り歩きながら、依然として第一線で投げ続けているコローンの姿には、だれもが敬意を抱くはずです。

 1997年、コローンがインディアンスの若きエース候補としてデビューした当時、岩手県奥州市で生まれ育った大谷はわずか3歳でした。当時のコローンといえば、最速100マイル(約161キロ)の快速球を武器に、力勝負で三振の山を築くなど、メキメキと頭角をあらわしました。その後、1歳下でもあるマリナーズのイチローとは、公式戦だけでなく、プレーオフでも名勝負を繰り広げるなど、お互いに好敵手、盟友として認め合う相手でした。エンゼルスに在籍した2005年には、21勝を挙げ、サイ・ヤング賞を獲得。メジャーを代表する剛腕として知られるようになりました。

 大ベテラン相手とはいえ、メジャー1年目の大谷にすれば、さほど思い入れがなくても当然でしょう。ただ、21年の歳月はダテではありません。かつてのコローンは、英語が不得手だったこともあり、メディアに対して口数も少なく、仏頂面で対応することも少なくありませんでした。某地の繁華街で、偶然出くわした際も、ニコリともせず、黙々とグラスを口に運んでいたこともありました。ところが、メッツへ移籍した数年前から、ぼくとつとした人柄、見ようによっては愛くるしい外見、コミカルな動作もあり、注目度が急上昇。「ビッグ・セクシー」との異名を取るなど、「癒やしキャラ」として人気を集めるようになりました。

 歳月を経るうちに、コローンは投球スタイルだけでなく、イメージもガラリと変えました。今や、剛球に頼るどころか、シンカー、チェンジアップなどを多彩に操る魔術師のような投球で打者を幻惑し、ファンを魅了しています。クラブハウス内でも、結果を問わず、メディアに対して朗らかに対応しています。

 延べ1万4293人(6月2日現在)の打者と対戦し、通算242勝を挙げたベテラン右腕との対決。メジャー1年目、23歳の大谷が、自ら45歳でプレーするイメージを持てるはずもないでしょう。ただ、メジャーの最高峰でトップレベルを維持することは、周囲が考えるほど、簡単ではありません。

 無事是名馬-。

 メジャーの扉を開けたばかりの大谷にすれば、結果とは別に、コローンとの「年の差」の重みを、しみじみと感じたのではないでしょうか。