カブスのダルビッシュ有投手(33)が21日のジャイアンツ戦に登板し、4本塁打を浴びて6失点と勝敗は付かなかったものの、快記録を達成しました。

というのも、7月30日以来、5試合連続で「無四球&8奪三振以上」をマークし、1908年以降ではメジャー初の記録となりました。

これには、ダルビッシュ自身も「そんなこともあるんですね。最初の2カ月くらいはみんな四球を出していたのに、四球を出さなくなって…」と苦笑するばかりでした。

実際、開幕以来、ダルビッシュは制球難に苦しんでいました。初登板の3回途中7四球をはじめ、5月までの2カ月間で12試合、61回を投げて41四球。与四球率(1試合、9回換算)は6・05と、メジャーの「四球王」になっていました。大型契約でカブスに移籍して以来、昨年も故障で活躍できなかっただけに、地元メディアの批判も日増しに厳しくなり始めていました。

ところが、コツコツと研究を重ね、フォームの修正を繰り返した結果、バランスのいい投げ方が固まり好感覚が結果につながるようになりました。7月以降は、9試合、54回を投げて四球は、なんとわずか2。与四球率は0・33と、驚異的な数字を残しています。

ストライクを取るのに必死で、いわゆる「ノーコン」に近かった投手が「精密機械」に変身し、しかもバッタバッタと三振を奪うのですから、周囲の評価もガラリと変わりました。ジョー・マドン監督が「今、球界でベストの投手」と話すのも決してお世辞ではありません。

大変身を遂げたダルビッシュは、率直な思いを語っています。

「制球って才能だと思ってたんですね。速球と一緒で、上原さん(元巨人)とか岩隈さん(現巨人)とか、天才なんだろうなと、田中(ヤンキース)とかも…。オレにはずっと無理だと思ってたんですけど、なんか知らんけど、自分でも不思議に感じてます。(カウントが)3-2になっても、結構ストライクで粘るから」。

もちろん、突然「天才」になったわけではなく、細かい技術的な裏付けがあることは言うまでもありません。元々、快速球のほか、8種類とも言われる変化球を操るだけに、制球力が加われば、本来であれば「鬼に金棒」のはずです。

ただ、フライボール革命や「飛ぶボール」などの影響で、本塁打が激増している投手受難の時代。そう簡単に好結果が残せるような世界ではありません。

「あとは本塁打ですね。それができれば、完璧になるんじゃないですか」。

四球を出さず、多くの三振を奪い、しかも本塁打を打たれない-。

そんなダルビッシュの快投を、ポストシーズンまでに見てみたいものです。【四竈衛】

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)