メジャーの開幕を巡って、MLB機構及びオーナー陣と選手会の間で話し合いが続いています。機構側の提案は、6月中旬にキャンプ、オープン戦を再開し、米国の独立記念日でもある7月4日までに開幕するなどのプランとされていますが、両者の折衝はかなり難航しています。

米国内の報道などによると、表面的には年俸の配分問題がクローズアップされているようにも伝えられています。18年にサイ・ヤング賞を獲得したレイズのブレーク・スネル投手がネット配信番組に出演。「自分がマウンドに立つとすれば、約束された金額を支払ってもらいたい。自分は命をかけてプレーしている」と発言したことで、金銭最優先のイメージが強調されています。

昨年3月に、5年5000万ドル(約52億5000万円)の大型契約を結んだ左腕の言葉でもあり、早期開幕を待望するファンを無視するような言葉として受け取られ、波紋を呼んでいます。

ただ、スネルの本音は、たとえ言葉足らずだったとしても、お金だけを最優先しているわけでもないような気がします。もし、7月初旬に公式戦を実施する場合、多大なリスクを背負ってプレーし、運営するのは、間違いなく選手と球界関係者です。コミッショナーのロブ・マンフレッド氏によると、全選手は定期的に検温、検査が義務付けられ、陽性反応が出た場合は完全隔離。対策には、自信をのぞかせています。

もっとも、メジャー球団は、クラブハウスだけでなく、チャーター機移動を含め、ほぼ全スタッフが「3密」どころか、濃厚接触の連続です。選手が不安感を抱く根源には、自分自身だけでなく、家族を含めた安全、健康面への懸念が消えないからでしょう。

開幕延期が決まった後の3月26日、機構側と選手会の間では60日間の給与保障と同時に、その後については試合数に応じた給与削減に応じることで合意しています。今回、ブレークが強硬な姿勢を示したのは、無観客で試合を実施する場合、減益分をさらに選手の給与に反映させようとするオーナー陣に対する問題提起、さらに危機管理体制への抵抗と解釈していいのかもしれません。

プロ野球選手である限り、誰もがグラウンドに立ち、ベストのプレーを披露したいはずです。たとえ無観客だとしても、テレビなどを通して、ファンに楽しんで欲しい気持ちは強いはずです。ただ、依然として感染拡大が収まっていないニューヨークやカリフォルニアへ移動し、全力でプレーすることを選手に求めることが、果たして正解なのでしょうか。開催方法を含め、今後はさらなる議論が必要のようです。

1日も早く、球音が戻る日を待ち望む一方で、少しでも不安感を抱えたままでプレーするとすれば…。

現時点では、どんな試合になるのか、具体的にイメージできません。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)