2021年のMLBも、残すところ約2週間あまりとなり、ポストシーズン進出を懸けた戦いやタイトル争いが、いよいよ佳境に入ってきました。日本では、エンゼルス大谷翔平投手(27)の本塁打王への挑戦が注目を集めていますが、米国内では両リーグMVPの行方も話題になっています。

ナ・リーグでは、ブライス・ハーパー外野手(28=フィリーズ)、フェルナンド・タティス内野手(22=パドレス)が有力候補に挙がり、ア・リーグでは大谷とウラジーミル・ゲレロ内野手(22=ブルージェイズ)の一騎打ちともみられています。

16日終了時のリーグ成績を比べてみると…。

◆ゲレロ 打率3割1分7厘(1位)、45本塁打(1位タイ)、103打点(3位タイ)

◆大谷 打率2割5分6厘(48位)、44本塁打(3位)、94打点(10位タイ)、23盗塁(4位タイ)

この数字だけを見ると、3冠王の可能性を残すゲレロに軍配が上がりそうなのですが、大谷の場合、投手としての「9勝2敗、防御率3・36、136奪三振」の成績も加わります。

先日、専門局「MLBネットワーク」の番組内で行われた対談には、ジョン・ヘイマン氏、ジョエル・シャーマン氏の両ベテラン記者が出演し、MVPの行方をテーマに意見を交わしました。互いに舌鋒(ぜっぽう)鋭いクセ者記者だけに、どんな激論になるのかと思いきや…。

まずは、ヘイマン氏が「通常の年であれば、ゲレロで間違いない。だが、今年は違う。たとえ、ゲレロが3冠王を獲得しても、今年は大谷だろう。これまでに、我々はあんなプレーを見たことがない」と、大谷優位を力説しました。

一般的に、番組を盛り上げるための進行を考慮すれば、次に反論に移るものです。ところが、シャーマン氏は、大きくうなずきながら言葉をつなぎました。

「打者だけの成績を見れば、大谷は2~3位票がほとんどだろう。だが、今年の場合、(1位満票の)30票中29票くらいを獲得するのではないか」と、早くも「当確」の予想を明かしました。これにヘイマン氏が「その通りだと思う」などとフォロー。激論どころか、司会者を含めた3人だけですが、ほぼ「満場一致」の雰囲気のまま、番組はあっさりと終了してしまいました。

もちろん、MVPの選出は全米野球記者協会(BBWAA)の記者投票によるものですから、異なる見解もあるでしょうし、最後の2週間の成績次第では、どんな結果になるかは分かりません。捕手のポジションで本塁打(45本=1位タイ)、打点(112=1位)の2冠に最接近しているサルバドール・ペレス(31=ロイヤルズ)が強烈に追い上げており、票が分散する可能性も高そうです。

ただ、MLB専門局が放映した内容が、米メディアの中で大半の空気を占めていることも間違いなさそうです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)