11月29日(日本時間同30日)にエンゼルス大谷翔平投手(27)がア・リーグ最優秀指名打者(DH)に贈られる「エドガー・マルティネス賞」に輝きました。個人名の付くタイトルは、日本では沢村賞と正力賞が有名ですが、大リーグにはレジェンドの名を冠した多くのタイトルが存在します。

最も有名なのは、ア、ナ両リーグの年間最優秀投手に贈られる「サイ・ヤング賞」でしょう。大リーグ歴代1位の通算511勝を挙げた同投手の功績をたたえ、1956年に創設されました。日本選手の受賞はまだありません。

「最強打者」の称号で有名なのは、大谷が受賞を逃した「ハンク・アーロン賞」です。ベーブ・ルースを超える通算755本塁打を放ったアーロン外野手の功績をたたえ、1999年から各リーグで最も著しい活躍を見せた打者に贈られています(日本選手の受賞なし)。

フィールド外の社会貢献では、「ロベルト・クレメンテ賞」も有名です。1972年12月31日、ニカラグア地震の被災者支援に向かう途中に事故死した同外野手をたたえて創設されました。野球での実績とともに、社会福祉にも貢献した選手に贈られる「真のMVP」とも言われています(日本人選手の受賞なし)。

また、新人王の正式名称は「ジャッキー・ロビンソン賞」です。ご存じ、黒人初の大リーガーで、新人王第1号の同内野手に敬意を表し、デビュー40周年にあたる1987年に命名されました。日本選手では1995年野茂英雄投手(ドジャース)、2000年佐々木主浩投手、2001年イチロー外野手(ともにマリナーズ)、2018年の大谷と4人が受賞しました。

一般的に知られていませんが、オールスターのMVPは正式には「テッド・ウイリアムズ賞」と言います。大リーグ最後の4割打者は日本で“打撃の神様”として知られ、2002年に彼が亡くなったときに、名誉をたたえて改名されました。日本選手では2007年にイチローが受賞しました。

一方、ワールドシリーズMVPは「ウイリー・メイズ賞」です。同シリーズ史上最高のプレーとして今も語り草になる「ザ・キャッチ」の63周年を記念し、2017年から改名されました。改名以前では、ヤンキース松井秀喜外野手が2009年の同シリーズでMVPに輝きました。

また、全米野球記者協会ニューヨーク支部によって、ポストシーズンで最も優れた活躍を見せた選手には「ベーブ・ルース賞」などが贈られます。ほかにも、最優秀救援投手にはア・リーグが「マリアノ・リベラ賞」、ナ・リーグが「トレバー・ホフマン賞」、球場内外でお手本になる選手に贈られる「ルー・ゲーリッグ賞」などがあります。

このように、球界に多大な功績を残した選手たちを大切にし、彼らの名前をさまざまな形で残すお国柄だけに、個人名が付く賞を挙げれば枚挙にいとまがありません。

ちなみに、米大学球界には「ジョン・オルルド賞」があります。ワシントン州立大時代に投打二刀流で活躍し、大リーグでは打者に専念し、通算2239安打を放った名一塁手。マリナーズではイチローと同僚だった同選手の功績をたたえ、2010年から大学球界の年間最優秀二刀流プレーヤーに贈られています。

オフも大谷の受賞ラッシュで沸いた2021年。「リアル二刀流」が流行語大賞に輝くなど、日米で「二刀流」が浸透した1年でした。いつか大リーグにも、投打で優れた成績を残した選手に、「ショウヘイ・オオタニ賞」が贈られる時代がやって来るかもしれません。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)