大リーグは27日(日本時間28日)も新労使協定を巡る交渉が結論に至らず、28日(同3月1日)のデッドラインまで残り1日だけとなり、開幕延期の可能性が高まってきました。一方で、現地からは大リーガーたちの自主トレの様子が届き始めています。いざキャンプが始まれば、ファンにとって最大の注目は各球団の1位有望株、いわゆるトッププロスペクトの動向です。

エンゼルスでは、大谷翔平投手(27)に続く次世代のスター台頭が待ち望まれます。最近の1位有望株を見ると、2018年が大谷、19年から3年連続でジョー・アデル外野手(22)でした。今年は、22歳の新人左腕リード・デトマーズ投手です。

祖父は元大学フットボールの選手、父クリスは元プロ野球選手というスポーツ一家に生まれ育ちました。父が米独立リーグでプレーしていた2001年、当時1歳だった息子リードが始球式に登場。ホームベースからわずか3メートルぐらいの位置でしたが、父と同じ左手でボールを投げ、「投手になるために生まれてきた」と言われました。

その父から「多大な影響を受けた」というデトマーズは野球に専念。特に父から「メンタル面を鍛えられた」といい、高校時代からプロ注目の投手に成長。強豪のルイビル大に進学すると、2年時の2019年に大学球界最多の13勝をマーク。同7月には日米大学野球で来日し、第3戦に先発して5回1安打無失点と好投。当時明大の森下暢仁投手(現広島)に投げ勝ち、日本でも話題になりました。大学3年時は新型コロナウイルス感染拡大の影響でわずか4試合の先発登板でしたが3勝0敗、防御率1・23の好成績。特に22イニングで48奪三振という数字が周囲を驚かせました。

そして20年に、ドラフト1巡目(全体10位)指名でエンゼルス入団。当時、ファームにはめぼしい先発投手がおらず、アマチュア担当スカウト部長のマット・スワンソン氏が「我々にピッタリ」と大喜び。本人も「オオタニと一緒にプレーするのが楽しみだ」と、ともにプレーする日を心待ちにしました。

その年はコロナ禍でマイナーリーグが中止となり、昨年本格的にプロデビュー。米球界では異例の傘下2Aからスタートし、6月には6イニングで16奪三振。速球は時速92~95マイル(約148~153キロ)と決して速くありませんが、同じ左腕クレイトン・カーショー(ドジャースFA)のようなカーブが最大の決め手。スワンソン氏も「球速よりコントロールとボールの動きで勝負する」という投球術で三振の山を築きました。

こうして、7月末にヤンキースへ放出した左腕アンドリュー・ヒーニーに代わって、早くも8月1日に大リーグでデビュー。同15日アストロズ戦では初勝利をマーク。マドン監督も「強敵相手にもおびえず投げた」と高く評価していました。今季について、ミナシアンGMは「先発候補の1人」に期待。昨年オフにメッツからノア・シンダーガード(29)、レッズからマイケル・ロレンゼン(30)と先発右腕2人を獲得しましたが、5番手以降は決まっておらず、同GMは「キャンプで先発の座を争うだろう」と言っていました。

いずれは、大谷に次ぐ先発2番手として期待される逸材。アマチュア時代から尊敬する父に「自信を持て」と叱咤(しった)激励され成長し続けた明日のヒーロー、大型新人デトマーズに注目してください。(大リーグ研究家・福島良一)