アメリカ版「甲子園」、大学でプレーする野球人あこがれの米中西部ネブラスカ州オマハを訪問しました。同地では6月17日から26日まで全米大学野球選手権、いわゆるカレッジワールドシリーズ(CWS)が開催されました。全米中が注目する一大イベントの熱気は、想像を超えるものでした。

カレッジワールドシリーズが開催されるチャールズシュワブフィールド内の芝生に描かれる今大会のロゴ(撮影・福島良一)
カレッジワールドシリーズが開催されるチャールズシュワブフィールド内の芝生に描かれる今大会のロゴ(撮影・福島良一)

会場はオマハ中心街の北側にある、2011年に開場したチャールズシュワブフィールド。最大3万5000人を収容可能な野球専用球場です。19年には大会プロモーションの一環として、大リーグ公式戦のロイヤルズ対タイガースの一戦も行われました。

カレッジワールドシリーズで盛り上がるチャールズシュワブフィールドの観客席(撮影・福島良一)
カレッジワールドシリーズで盛り上がるチャールズシュワブフィールドの観客席(撮影・福島良一)

今年は全米各地区の予選を勝ち抜いたテキサスA&M大、オクラホマ大、テキサス大、ノートルダム大、スタンフォード大、アーカンソー大、オーバーン大、ミシシッピ大(愛称オールミス)の強豪8校が出場。テキサス大は歴代最多38度目の出場を誇る常連校。大学球界のホームラン王、テキサス大のイバン・メレンデス内野手(3年)ら、7月17~19日に行われる大リーグのドラフト上位候補も多数参加。ネット裏には各球団のスカウトもいました。

カレッジワールドシリーズに出場したテキサス大の主砲メレンデス(撮影・福島良一)
カレッジワールドシリーズに出場したテキサス大の主砲メレンデス(撮影・福島良一)

大会はダブルエリミネーション方式のトーナメント。WBCでも採用されているように、2敗した時点で敗退。最後に残った2校が決勝に進み、先に2勝したチームが全米王者となります。毎日午後1時と同6時から2試合ずつ入れ替え制で行われ、現地で観戦した初日の17日、2日目の翌18日の2試合とも、スタンドはほぼ満員でした。最初の2日間で合計10万人近い観客を動員したのには驚きました。

米国の大学野球は、大学スポーツで圧倒的な人気を誇るフットボールやバスケットボールに比べると、人気がありませんでした。大学野球から始まった日本とは異なり、発祥地の米国野球は19世紀からプロ野球とともに発展。大学野球にスポットが当たることはあまりありませんでした。

しかし、近年は大学野球の人気が急上昇。昨年は史上最多の36万1711人を動員。オマハの人口に迫る観戦者を集めました。最大の理由は、入団からメジャー昇格まで最低2、3年のマイナー経験を必要としたのが、最近は1、2年で大リーグでも活躍する選手が増加。大学選手の注目度がアップしています。

熱戦中のカレッジワールドシリーズ。大会第2日の第1試合ではスタンフォード大とアーカンソー大が対戦(撮影・福島良一)
熱戦中のカレッジワールドシリーズ。大会第2日の第1試合ではスタンフォード大とアーカンソー大が対戦(撮影・福島良一)

選手の実力も上がっています。最速105・5マイル(約169・8キロ)の剛腕ベン・ジョイス投手(テネシー大3年)のように、大リーガー顔負けの選手が出現。ますます大学野球への関心が高まっています。さらに、大学野球は金属バットを使用。最近は効果的なトレーニング方法なども浸透し、本塁打数が記録的に増加。米国人好みの打撃戦が多く見られるようになりました。

ところで、米大学球界には「ジョン・オルルド賞」があります。これはワシントン州立大時代に投打の二刀流で活躍し、のちにブルージェイズなどで一塁手を務めたオルルドにちなんで名付けられた賞。2010年から年間最優秀二刀流プレーヤーに贈られています。

カレッジワールドシリーズ大会第2日の第2試合で、国歌を斉唱するオーバーン大の選手たち(撮影・福島良一)
カレッジワールドシリーズ大会第2日の第2試合で、国歌を斉唱するオーバーン大の選手たち(撮影・福島良一)

今大会も多くの二刀流選手が見られるかと思いましたが、8校のメンバー表を見ると、投打の二刀流は計10人程度。大学関係者に聞くと「高いレベルで二刀流を続けるのはごくわずか」というのが、現状のようです。世界最高峰の大リーグで、二刀流を突き進むエンゼルス大谷翔平投手(27)のすごさを、あらためて思い知らされました。

今年はオールミスが決勝でオクラホマ大をスイープし、初優勝を飾りました。高校時代もロッキーズ37巡目で指名されているオールミスのダンハースト捕手ら、大会出場選手の中から、何人がドラフト指名されるでしょうか。そこから大リーグの舞台に立ってくれることを、楽しみに待ちたいと思います。(この項おわり)【大リーグ研究家・福島良一】

カレッジワールドシリーズ試合前のベンチ風景と福島氏(手前)
カレッジワールドシリーズ試合前のベンチ風景と福島氏(手前)