米独立リーグで史上初の女性選手が誕生しました。6月に大リーグをはじめ、独立リーグ、カレッジワールドシリーズ(全米大学野球選手権)などの米野球を視察行脚しました。MLB提携の独立リーグ、アトランティックリーグ所属のケルシー・ウィットモア選手(24)にも会って来ました。

ニューヨークの摩天楼がそびえ立つマンハッタン南端からスタテン島行きのフェリーに乗り、自由の女神像などを見ながら約25分の船旅。同島ターミナルのすぐ西側、スタテンアイランド・フェリーホークスの本拠地SIUHコミュニティーパークに到着。ウィットモアと試合前の練習中に会うことが出来ました。

ウイットモアは今年4月に入団。5月1日に同リーグ史上初めて先発出場という歴史的快挙を成し遂げ、日本でも話題の選手です。米西海岸のカリフォルニア州サンディエゴ出身。「6歳のときに野球を始めました。いつも父とキャッチボールし、リトルリーグ、ポニーリーグ、高校と、ずっと男子たちとプレー。その後、女子野球の米国代表チームにも選出されました」。

父スコットさんは学生時代に野球、アメリカンフットボール、バスケットボール、陸上競技と4つの競技をこなした万能アスリートで、現在は中学校で体育の先生です。母ミラソルさんはフィリピン出身で幼稚園の先生という教員一家。ケルシーも野球以外にサッカー、ゴルフなどスポーツ万能で「たぶん父の遺伝子だと思います」。

2014年には女子ワールドカップ出場で来日経験もあるそうで、日本代表と対戦したときの印象を聞くと、「素晴らしいチーム。名前は忘れたけど、特にピッチャーが良かった」と感心。おそらく、大会MVPに輝いた里綾実投手のことだと思います。

憧れのヒーローについては、「ジャッキー・ロビンソン」と即答。大リーグで人種差別と闘い続け、黒人選手たちに門戸開放した歴史的人物であり、「人種の壁を破り、ドジャース入りを果たした生涯に感銘を受けた」とか。彼女にも女子野球界の先駆者として重なるものを感じました。

チームでは投手兼外野手、いわゆる二刀流プレーヤーです。同じ道を歩むエンゼルス大谷翔平投手(27)については「投打ともアメージング」と驚きの様子。そして「特にテレビで見て、投げても打ってもパワフル」と感心しまくりでした。巨人でもプレーしたエドガー・アルフォンゾ監督(48)によると、「今は技術を学んでいるので、週1度の割合で試合に出している」と、まだベンチで学ぶ日が多いようです。

それでも、リリーフ登板では3試合連続無失点と好投。打席ではまだヒットこそありませんが、打撃練習ではセンター中心にライナー性の打球を飛ばすなど、非凡な才能を感じました。

球団スタッフによれば、「お父さんがシーズン中は休暇を取り、スタテン島に家を借りて一緒に生活。自宅から球場へ車で送り迎えするなど、全面的にサポートしている」とのことでした。ケルシーは将来の夢について「とにかく野球を続け、最も高いレベルを目指したい。そして野球で生計を立てたい」と、とびっきりの笑顔で答えてくれました。

大リーグでは今、GMやコーチなど女性の進出が目覚ましいです。彼女も女子野球界のパイオニアとして、道を切り開く1人になっていくでしょう。世界の野球少女のために頑張れ、ケルシー!【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

ニューヨークのマンハッタンにあるスタテン島行きの船乗り場
ニューヨークのマンハッタンにあるスタテン島行きの船乗り場
スタテン島に向かう船から見える自由の女神(撮影・福島良一)
スタテン島に向かう船から見える自由の女神(撮影・福島良一)
スタテン島に向かう船から見たニューヨークのマンハッタン風景(撮影・福島良一)
スタテン島に向かう船から見たニューヨークのマンハッタン風景(撮影・福島良一)
スタテン島の乗船場から見たニューヨークのマンハッタン風景(撮影・福島良一)
スタテン島の乗船場から見たニューヨークのマンハッタン風景(撮影・福島良一)
試合前に打撃練習を行うフェリーホークスの選手たち(撮影・福島良一)
試合前に打撃練習を行うフェリーホークスの選手たち(撮影・福島良一)
試合前に国歌斉唱を行うフェリーホークスの選手たち(撮影・福島良一)
試合前に国歌斉唱を行うフェリーホークスの選手たち(撮影・福島良一)
フェリーホークスの本拠地SIUHコミュニティーパーク(撮影・福島良一)
フェリーホークスの本拠地SIUHコミュニティーパーク(撮影・福島良一)
スタテン島の乗船場(撮影・福島良一)
スタテン島の乗船場(撮影・福島良一)
スタテン島の乗船場に隣接する米独立リーグ球団フェリーホークスの本拠地球場(撮影・福島良一)
スタテン島の乗船場に隣接する米独立リーグ球団フェリーホークスの本拠地球場(撮影・福島良一)
米独立リーグで史上初の女性選手となったウィットモア(左)と福島良一氏
米独立リーグで史上初の女性選手となったウィットモア(左)と福島良一氏