「野球の華」がスポットライトを取り戻しつつあります。エンゼルス大谷翔平投手(28)が18日(日本時間19日)オリオールズ戦で先制の10号ソロを放ち、3年連続、メジャー5度目の2ケタ本塁打に到達しました。今季チーム45試合目でシーズン換算は36発。昨季の34本を上回るペースで、3年連続30本塁打へまずは視界良好といえます。

その本塁打ですが、今季は興味深いデータが出ています。大リーグではホームランが増加傾向にあることです。

2019年に両リーグ合わせて過去最高の6776本塁打を記録。それを受け、2021年から「飛ばないボール」に切り替わりました。昨年は新仕様となったボールが開幕から全球使われ、また全球場で湿度管理も始まったことから、5215本まで減少。19年に比べて1試合あたり2・78本から2・14本と激減しました。

大リーグは今年、新しいルールを導入。その中でも、極端な守備シフトの禁止とベース拡大により、近年著しく低下していた打率の上昇と盗塁数の増加が見込まれました。実際にシーズンが始まると、昨年に比べて打率は2割4分3厘から2割4分8厘へ、盗塁数も1試合あたり1・02個から1・40個(5月19日現在)へと上昇しました。思惑通りの結果となっています。

一方で、大リーグが意図しなかったホームラン数も増加。1試合あたり2・14本から2・30本へと、飛ばないボールのはずが再び増加に転じています。それには、3つの理由が考えられます。

まず、昨年はオーナー側のロックアウトによりキャンプが短縮されましたが、今年は通常通りキャンプが行われました。万全の状態でシーズンを迎えた選手が多く、開幕からホームランが乱れ飛んでいます。

しかし、それ以上に注目すべきは新ルールの影響です。まず、投球時間を制限する「ピッチクロック」により、投手に「戸惑い」が生まれました。制限時間内に投げ急ぐあまり、ボールが甘くなる傾向にあります。

また、極端な守備シフトの禁止も、打者の背中を押しているようです。特に左打者はボールを引っ張る傾向が出てきました。ホームラン増の一因だと考えられています。大谷が打ったホームランの打球方向を見ると、昨年は34本塁打のうち、センターからレフト方向が半数以上の18本もありました。今年は10本中9本がセンターからライト方向と対照的です。

恩恵を受けた1人が、左の大砲ジョーイ・ギャロ外野手(29)です。典型的なプルヒッターで昨年まで守備シフトに泣かされましたが、今季は新天地ツインズで早くも2桁本塁打と復活。そう考えると、新ルールはホームラン打者にも追い風になっているようです。大谷もそういう意味では、打率や盗塁数だけでなく、ホームラン量産にも期待できそうです。(大リーグ研究家・福島良一)

【イラスト】ア・リーグ本塁打5傑
【イラスト】ア・リーグ本塁打5傑