エンゼルス大谷翔平投手(28)は、「先頭集団」に残って折り返し地点を迎えられるでしょうか。

米国では毎年5月の最終月曜日はメモリアルデーです。戦没将兵追悼記念日で、週末と合わせると3連休になります。大リーグ各球団にとって、この時期に優勝戦線にいることが重要です。なぜなら、メモリアルデーが終わると学校が夏休みに入り、集客が見込まれる書き入れ時を迎えるからです。

さて、今年から大リーグは対戦方式が変わりました。全球団が他29球団と総当たりで対戦することになりました。そのため、同地区同士の対戦が76試合から52試合に減少。逆に他地区、及びインターリーグの試合が大きく増加しました。

今季はそのため、大きな「異変」が起きています。5月28日(日本時間29日)の試合を終えて、ア・リーグ東地区5球団が全て勝率5割以上。しかも、地区全体で5割9分6厘という驚異的な勝率を誇っています。この勝率を上回るのは、ア・リーグ西地区1位のレンジャーズとナ・リーグ西地区1位のブレーブスだけです。元々、同地区は最大の激戦区であり、毎年のようにヤンキースやレッドソックス、レイズなどが高い勝率でペナントレースを展開。今季は同地区内の星のつぶし合いが減ったことにより、ますますハイレベルな戦いとなっています。

この展開が変わらなければ、同東地区からワイルドカード3球団全て出そうな勢いです。そうなると、他地区のチームは優勝しないとプレーオフ進出が難しくなります。

特に、今季も大谷が投打で奮闘するエンゼルスは、同じ西地区に昨年世界一に輝いたアストロズがいます。直近6年間で2度の世界一と5度の地区優勝を誇り、6年連続でプレーオフ進出も果たしており、まさに常勝軍団です。この地区を制することは、容易ではありません。

ちなみに大リーグ史上、同一地区の全チームが勝ち越しで終わったシーズンは1度もありません。他のプロスポーツを見ると、プロフットボールのNFLもありません。一方、プロバスケットボールのNBAでは今季、八村塁(25)が所属するレイカーズなど、西カンファレンス太平洋岸地区の5チームが全て勝率5割を超えました。

過去に大リーグで最も勝率が高かった地区は、2002年ア・リーグ西地区の勝率5割6分6厘です。同年は1位アスレチックスが103勝59敗、2位エンゼルスが99勝63敗、2年目のイチロー外野手らを擁した3位マリナーズが93勝69敗という激戦でした。最終的に、エンゼルスがワイルドカードから初の世界一に輝きました。

今季、同西地区ではレンジャーズが開幕から首位を走り、本命アストロズが本来の力を発揮し始め、勝率を上げています。エンゼルスも勝率5割以上と健闘していますが、優勝、もしくはワイルドカード争いに食い込むには、もっと貯金を増やす必要があるでしょう。9年ぶりのプレーオフに進出を果たし、今季終了後FAとなる大谷を残留させるためにも、勝負の夏を迎えます。「打倒アストロズ」で地区優勝を狙うぐらいの覚悟で、臨んで欲しいと思います。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)