ナ・リーグ首位を走るドジャース。既にプレーオフ進出を決めており、20日時点で2位ダイヤモンドバックスに9.5ゲーム差をつけていることから地区優勝もまず間違いないだろう。ワールドシリーズに向けて強力な先発陣はダルビッシュ有の加入もあってさらに盤石な体制となっている。そしてその中心にいるのはやはりクレイトン・カーショー投手だ。

 2008年にメジャーデビューしたカーショーはこれまで3回サイヤング賞を受賞し、通算防御率が2.36とまさにMLBを代表する左腕として君臨してきた。今シーズンも7月に腰を負傷して9月1日まで戦列を離れるトラブルはあったものの、17勝を挙げる活躍を見せている。そんなカーショーだが、現地18日敵地で行われたフィリーズ戦で先発したものの、4失点で4敗目を喫した。実はこの4失点が歴史的出来事として意外な注目を集めている。

 この失点はドジャースが2点リードしていた6回裏2死満塁の場面でフィリーズの5番アーロン・アルテール左翼手が甘く入ったスライダーを左翼2階席まで運ぶ満塁本塁打によってもたらされたものだ。それだけならカーショーの手痛い失投というだけで済むのだが、実はこれはカーショーがMLBで浴びた初めての満塁本塁打だったのである。

 カーショーはそれまで287試合に先発し、125本の本塁打を打たれていたが、一度も満塁の場面で打たれたことはなかった。アルテールへの一球は通算2万9189球目だったということである。満塁という場面になっても崩れることがなかったわけで、いかにカーショーが丁寧なピッチングを継続して行ってきたかがわかる数字だ。

 またその初被満塁本塁打をアルテールが放ったというのも印象的である。今シーズンは打率2割7分6厘、18本塁打とまずまずの数字を残しているが、決して打撃に秀でているわけではなく、9月も17日までで3安打しかしていなかったからだ。カーショーにとってはまさに手痛い失投だったかもしれない。

 アルテールもその特別さを認識しているようで、地元ニュースサイト、Philly.comに対し「特別な試合になった。どれほどすごいことか、どれほどの年数がかかったかでわかるだろう。彼は将来殿堂入りする選手なんだ」と語ったということである。

 一方のカーショーは負傷からの復帰後2敗目だったこともあってか「進歩がない。リードしていたのに自分がそれを吹き飛ばして負けてしまった。まったく進歩がなかった」と敗戦を悔しがっていたとのことだ。

 いずれにせよ、こんな一発の被弾さえ記録として受け止められるのがカーショーのすごさである。