現地21日、MLBとMLB審判員協会(MLBUA)は5年間に及ぶ新たな労使協定を結んだことを発表した。その中で特に注目されているのが、ボール、ストライクを自動判定するシステムの開発とテストを行うことで、MLBUAがMLBに協力するとした点だ。

これはオートメイテッド・ボール・ストライク・システム(ABS)と呼ばれるもので、元々軍事用だった3次元ドップラーレーダーを応用し、投球の速度や回転数、変化量、さらに打球の速度や打ち出し角度などを算出できるトラックマンというシステムが基礎となっている。トラックマンはMLBでは全30チームのスタジアムに設置されており、ボールや選手の動きを追跡してデータ化する中核技術として使われている。日本のプロ野球でも11チームが採用しているほどポピュラーな存在だ。

そのトラックマンを利用し、MLBは入力されたXYZ座標からボールとストライクの判定に変換するソフトを開発してきた。7月に行われた米独立リーグ、アトランティック・リーグのオールスターゲームで実際に導入されている。この試合では球審がWiFiでABSに接続したiPod Touchを携帯、さらにブルートゥースで接続したイヤホン、AirPodsを耳に装着。イヤホンから聞こえる「ボール」か「ストライク」の判定をそのままコールした。この試合の際、リーグの社長は「人間より正確なのは疑いようがない」と語っている。

さらに同リーグのシーズン後半でこのシステムが用いられたほか、アリゾナ秋季リーグの会場ソルトリバー・フィールドでも数十試合で試験的に用いられている。ただアリゾナ秋季リーグの試合では判定を巡るトラブルが起き、抗議した選手が退場になったこともあった。

このままロボット球審が導入されていくかどうかは、MLB選手会(MLBPA)が同意するかも大きな壁となるだろう。ただロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは11月にいくつかのマイナーリーグの試合で使用されるだろうと発言しており、通信社APの報道によれば1Aのフロリダステート・リーグで試験導入される見込みだという。さらにそこでうまくいけば2021年に3Aで導入される可能性もあるということだ。

ボール、ストライクの判定から解放されることで審判が他の判定に注力でき、ストレスが軽減されるという意見もあり、今後の動向が注目される。