現地4日、MLBと全30チームがコロナ禍による損失補償の支払いを拒否している複数の大手保険社を相手に集団訴訟を起こしたと複数のメディアが報じた。訴訟はアスレチックスが保険会社AIGを相手にカリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所に対して起こしたものが中心となっている。原告には傘下のMLBネットワークやMLBアドバンストメディア、チケット販売のTickets.comも加わっているということだ。

今年MLBは新型コロナウイルスの流行により、開幕が遅れたうえ、レギュラーシーズンが60試合に短縮され、1500試合以上がキャンセルとなった。さらに実施された試合もほとんどが無観客となっている。このためチームとリーグはチケットの販売、駐車場料、グッズや飲食販売、さらには地元と全米放映権料などで数十億ドルの損失をかぶったとされる。総年俸が昨季メジャー最高額だったカブスは1億4000万ドルの損失になったとされ、ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーが少なくとも30億ドルにのぼるだろうとコメントしていた。

訴訟でMLBとチームは保険会社と結んでいた契約の「全危険担保条項」には新型ウイルスの流行も含まれ、保険金の支払いが行われるべきと主張している。ペンシルバニア州のCovidカバレッジ訴訟トラッカーによれば、3月以上こうしたコロナ禍による損失補償を求める保険会社への訴訟が1400件以上起こされているという。うち舞台芸術と観客スポーツ関連は27件にのぼる。

MLBに先立ち、シーズン全体が中止となったマイナーリーグのチームも集団訴訟を起こしたがウイルスに関する条項が入っていなかったため、敗訴となった。またMLB以外ではアメリカンフットボールNFLのアトランタ・ファルコンズとサッカーMLBアトランタ・ユナイテッド、バスケットボールNBAヒューストン・ロケッツ親会社などもすでに訴訟に入っている状況だ。

一方で、テニスのウインブルドンは契約していた保険にウイルスに関する条項が明確に入っていたことから保険金を受け取れ、大きな損害を出すことなく大会を中止にできたことも話題になった。

実際のところ、MLBとチームが勝訴できるかはそれぞれの契約に書かれた文言によって左右される模様だ。特に「未知のウイルスの除外」や「伝染病の特定の補償範囲」といったことが重要になるという。MLBは「損失はすべて補償されると自信を持っている」としているが、実際のところかなり厳しいというのがもっぱらの見方である。