新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、アメリカではワクチンの接種も始まっている。そのワクチン接種の動向がMLBにも影響を与える要因となり始めているようだ。

現地1月6日、AP通信はMLBがMLBとマイナーリーグのチームに対し、スプリングトレーニングの開始予定とされている2月中旬までにメジャーリーガーがワクチン接種を受けられていない場合ダブルAとシングルAの選手の参加が遅れる可能性があると通達したと報じている。

MLBのマイナーリーグ運営・開発担当ピーター・ウッドフォーク上級副社長が出したとされる文書では「メジャーリーグとマイナーリーグのスケジュールに影響を与える多くの問題を評価中だが、最も重要なことには選手やスタッフが予防接種を受けられる時期が含まれる」とした上で、「メジャーリーグのスプリングトレーニング開始時に選手やスタッフにワクチンが利用できないとすると、ダブルA、ハイA、ローAに配属される選手のためのスプリングトレーニングが延期される可能性が高いのは、クラブが厳しい物理的な距離を必要とする環境の中で、すべての選手に施設に十分なスペースをもうけることができないことがわかったため」と説明している。

さらにそのシナリオではメジャーリーガーやトリプルAの選手が開幕のため施設を出た後、「シーズンの初めに代替地の手配を利用する必要がない限り」スプリングトレーニングに参加することになるという。いわゆるソーシャルディスタンス維持のため、マイナーリーグ、それも下位に所属する選手たちが割を食う形になる格好だ。メジャーを目指して奮闘する選手たちにとってはやるせない気持ちになることだろう。

一方で、ロサンゼルス・タイムズは12日、MLBは2021年シーズンの試合観戦者に対しワクチンの接種や事前検査を要求しない方針だと報じた。各チームに通達したメモから判明したという。

このメモは今シーズン全チームがファンをスタジアムに迎えるために必要となる「最低限の健康と安全の基準」のアウトラインを示したもの。ワクチンの接種に関しては「COVID-19ワクチンの生産と流通を取り巻く不確実性」を理由の一部として挙げたとしている。

またメモではファンのグループ間でソーシャルディスタンスを保つために、チケットが区画で区切った「ポッド」で販売されることが期待され、マスクの着用義務や試合前の練習見学の禁止なども記されているということだ。

ワクチンの接種は始まったものの、進行の遅れも報じられている。さらにMLB側はスプリングトレーニングとシーズン開幕を延期したい意向なのに対し、年俸の満額支給を望む選手会側の対立も深刻で、いまだ今後のスケジュールが見通せない状況だ。明るい希望であるワクチン接種ですら不安要素となってしまうMLBの現状は暗い。