笑いと感動に包まれた“卒業式”だった。米大リーグ・エンゼルスに移籍する大谷翔平投手(23)が25日、日本ハムの本拠地・札幌ドームで記者会見を行った。スタンドとグラウンドの一部は無料開放され、約1万3000人のファンが見つめる中、在籍した5年間の感謝の思いを直接伝えた。エンゼルスのユニホーム姿も披露し、マウンドから捕手役の栗山監督へ、「最後の1球」を投じた。

 いたずらっぽく、笑った。つかみは完璧だ。大谷が一声で、約1万3000人のファンを魅了した。飛び出したのは、流ちょうな英語。度肝を抜かれた場内は、大爆笑に包まれた。「今日はお別れということではなく、楽しい時間を共有したい」。5年間の感謝を伝えるために、自ら望んだ公開記者会見の場。プロ初勝利、165キロの最速記録、数々の激闘を繰り広げてきた札幌ドームには、ラストにふさわしい和やかな空気が広がった。

 揺るがない信念で、世間の常識を変えてきた。投打二刀流に人々は酔いしれた。その証しが、ぎっしりと埋まったスタンドにあった。「僕が入団したときにはない後押し。これだけ多くの人に背中を押していただけるのは、僕にとって大きなことだと実感しています」。1度は日本球界を経ずに、直接メジャーに挑戦することを公表したこともある。日本ハムで成長し、海を渡る今、あのときにはいなかった心強い仲間たちが、夢の続きを応援してくれている。

 サプライズに、感動もした。中島、近藤らが花束贈呈で登場。中田、有原らのビデオメッセージも紹介。「普段はウルッとはこないんですけど…。よかったですね」。5年間で培った、チームメートとの絆。ファンの存在とともに、新天地で世界一を目指す勇気になる。

 ちょうど5年前のクリスマス。まだ幼さの残る大谷は、入団セレモニーで、打席の栗山監督へ“プロ第1球”を投じた。この日はエンゼルスのユニホームに袖を通し、指揮官のミットへ“最後の1球”。「自分自身も楽しめた。区切りとしてはよかったなと思います」。日本球界での5年間に終止符を打った。

 さあ、世界を驚かす挑戦が始まる。「ここで教えられたことを向こうでやりたい。継続して。個人的に頑張るのではなく、一緒にやってきた人の思いをもって、一生懸命頑張りたいと思います」。日本中のファンから愛された大谷サンタの挑戦は、クリスマスの夜に、雪の北海道で第1章を完結させた。【本間翼】

 ◆大谷入団会見 日本時間10日にアナハイムで行われた会見では、壇上の全員の名前を挙げて周囲への謝意から始まる米国流のスピーチで、聴衆の心をつかんだ。背番号17について「本当は27にしようかなという気持ちはあったんですけど、埋まっていたので17番にしました」と、エ軍の主砲トラウトの「27」を持ち出すアメリカンジョークでソーシア監督をも爆笑させた。