エンゼルス大谷翔平投手(23)が、打者としてスタメン出場した試合では、10日以来4試合ぶりとなる6号ソロを放った。大敗ムードの中、9回裏1死から中堅へライナーで運んだ。チームの2試合連続完封負けを防ぐ1発となったが、好投した先発投手を援護できず、「申し訳ない」と反省の言葉を残した。

 閑散とした観客席からの拍手を背に、大谷は無表情のまま、ダイヤモンドを1周した。9回裏、中堅越えの6号ソロを放ち、2試合連続完封負けは防いだ。エンゼルスにとって22イニングぶりの得点。だが、大谷は一瞬たりとも笑わなかった。結果的に大差となったものの、5回までは両軍無得点の投手戦。援護のない投手の心境は、手に取るように理解できた。「もっと早い段階で打てれば、結果は違ったと思う。(先発の)スカッグス投手は素晴らしい仕事をしていた。申し訳ない気持ちはあります」。

 レイズ先発は昨年WBC米国代表で、4年連続開幕投手を務めたアーチャー。第3打席までは、完全に封じ込まれた。エンゼルス打線も大谷の本塁打まで、わずか2安打。年俸20億円以上を稼ぐ主軸はともかく、最低年俸の大谷が責められる立場ではないが、打者大谷はけなげなまでに、真顔で「申し訳ない」と口にした。

 日本ハム入団以来、多様な批評をよそに自らの意志を貫き「二刀流」を続けてきた。ただ、周囲への気配りも忘れていない。4回裏の第2打席。ファウルチップが後方へ飛んだ際には、即座に球審の体に打球が当たっていないか気遣った。15日(日本時間16日)のアストロズ戦では大谷の打球が直撃した球審が負傷退場したばかり。その直後、左飛に倒れると、小走りで駆け寄るバットボーイを制し、自らバットを拾い、ダッグアウトへ戻った。メジャー広しといえ、凡退した自分のバットを引く選手は大谷くらいしかいない。

 「今日のこの1点が、明日の1回につながっていければいいなと…」。豪快な1発、時速160キロの速球で魅了するだけではない。純粋かつ、ひたむきに野球に取り組む姿勢。誰からも愛される選手としての資質に、米国のファンが気付かないはずはない。【四竈衛】