【テンピ(米アリゾナ州)21日(日本時間22日)=斎藤庸裕】 引退を表明したマリナーズ・イチロー外野手(45)が、野球の将来を託したのはエンゼルス大谷翔平投手(24)だった。

互いに熱望していた対戦はかなわなかったが、初めてポスティング移籍し、日本人野手の評価を一気に高めた大リーグの先輩から、二刀流に挑む後輩へパイオニア魂は受け継がれる。平成を駆け抜けた先輩から「世界一の選手にならないといけない」とゲキを受け、大谷が新時代を切り開く。

   ◇   ◇   ◇

「イチロー道」を歩む。大谷が不変の思いを語った。引退を米アリゾナ州のキャンプ地で早朝に知った。「本当に引退するのかなっていう感じ。まだそんなに信じられていない」。受け入れ難かったが、決意を新たにした。

「目標になるような存在。それはこれからも変わらない。プレーする姿は見られないけど、昔から見てきた、選手像というのを目標にしてやっていく」

イチローは10年連続200安打、シーズン最多262安打の新記録など、数々の偉業を成し遂げた。安打や盗塁で得点を稼ぐスモールベースボールのパイオニアとして、パワーが主流だったメジャー野球に風穴をあけた。常識や先入観を覆す。それが19年間でイチローが歩んできた道。次は二刀流の大谷が、新時代を切り開く番だ。

昨年は右肘を故障したが、新人王を獲得。二刀流で結果が残せるのか、周囲の懐疑的な見方を一掃した。二刀流で突き進む大谷へ、イチロー流のプランを掲げた。「1シーズンごとに、サイ・ヤングと本塁打王」。投手の最高栄誉であるサイ・ヤング賞を獲得し、翌年は打者専念で本塁打王になる。「そんなこと考えられない。でも翔平は想像させるじゃないですか。投手として20勝、翌年にはMVP取ると想像したら化け物ですよね」。常識を覆せる。その可能性が大谷にもある。だから夢も膨らむ。

投手イチロー、打者大谷という夢の直接対決はかなわなかった。だが、野球道は受け継がれる。昨年のキャンプでは、大谷がイチローから助言を受けた。「(プレーを)見るだけでも勉強になるんですけど、実際に教えていただいてすごく勉強になった」。恩返しはプレーで。イチ流の心得を、二刀流で実践する。