【タンパ(米フロリダ州)13日(日本時間14日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(24)が、メジャー史上初の快挙を成し遂げた。レイズ戦に「3番DH」で出場しサイクル安打を達成。日本人がメジャーで記録したのは初めてで、投手で2勝以上を挙げ、サイクル安打をマークしたのは、1921年のジョージ・シスラー以来、98年ぶり。投手以外の守備位置に就いたことのない選手の達成は史上初の大記録。またメジャー史に「OHTANI」の名を刻んだ。

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歴史にその名を刻む打球が、センター前で弾んだ。一塁上、普段はクールな大谷が、笑った。投手以外の守備経験のない選手では史上初、そして日本人メジャー初のサイクル安打を達成。「うれしかった」と素直に喜んだ。

24歳の若者の偉業に敵地が本拠地のような雰囲気に包まれる。スタンディングオベーションの拍手喝采。「偉大な先輩がいる中で初めて達成できたというのは、すごくうれしいですし、自信になる」とほおを緩め、穏やかな表情を見せた。

“チーム最優先”という大谷の真骨頂が土台にあった。記録を意識したのは「三塁打を打った後」。5回の第3打席で王手をかけ、同僚からの期待も一気に高まった。だが、打席ではチーム打撃に徹した。2点リードの7回2死一塁。1ボールからの2球目、3球目をフルスイングした。「単打を打ちたいなということはなかった」。長打を打てば貴重な追加点が入る。さらに「四球でもいいですし、自分の仕事をしたいなと。ボール、ストライクの判断もできていた」。注目が“サイクル”一点に集中した中での冷静な状況判断。強振から一転、フルカウントから8球目の甘く入ったスライダーは、コンパクトに振り抜き中前に運んだ。記録よりもフォア・ザ・チームが偉業につながった。

メジャー2年目。既に熟練された思考がある。この試合でエ軍で通算200号を放ったプホルスを「毎日、毎日、人よりも練習を重ねたり、見てて勉強になるというか、手本になる」と敬った。試合前のフリー打撃で、常に微調整を続ける大打者をすぐ隣で目に焼き付ける日々。そんな2人は常に「チームに貢献する」と口にする。ギャエゴ三塁コーチは「若い選手はヒットや本塁打を打つことばかり考えがち。でも彼(大谷)はゲームに勝つことを考えている」と評する。結果に固執しない。そんなベテランさながらの気構えがある。

サイクル安打達成直後よりも、勝利後に満面の笑みを見せた大谷。「チームも勝っていましたし、いい流れではきていたので。必ず打たなきゃみたいなプレッシャーは、そこまでなかった」。いつも通りの冷静さが生んだメジャー史上&日本人初の快挙。試合後はクラブハウスでビールのシャワーを浴びた。「初勝利とか初ホームラン以来でしたけど、いつやられてもうれしい気持ち」。初めての記録に、最後は少しだけ浸った。