野球とのなじみが薄い欧州生まれのメジャーリーガーがいる。ツインズのマックス・ケプラー外野手(26)。なぜ野球に挑戦する道を選んだのか。

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最高峰の舞台で戦っているケプラーの目は輝いていた。母国ドイツの人々と異色の道を進むことに迷いはなかった。人気スポーツのサッカーやテニスではなく、野球を選んだ。決断は14歳の時だった。

「僕はただ、みんなとは違うことがしたかった。たぶん、それが僕の本質だからかな。いつもそうなんだ。違う国の考え方やアイデアを知りたかったし、挑戦してみたかった。僕にとっては、野球がその玄関だった。アメリカへ行くんだというチャンスをくれた」

野球が盛んではない国で生まれ育った。両親はバレエダンサー。幼少の頃はサッカー、テニスもプレーした。運動能力に優れ、同国の女子テニスの元女王シュテフィ・グラフがサポートするテニスアカデミーから、奨学金制度で入学のオファーを受けた。それでも「野球が好きだった」。英語と2カ国語教育のジョン・F・ケネディ・スクールに通い、野球に没頭した。練習はサッカー場。マウンドやベースは木を集めて作った。「(野球をやる)友達はたくさんいたよ」と笑い、懐かしそうに振り返る。

米国に住む祖父からは、ヤンキースのピンストライプのズボンをもらい、8年間、愛着を持って着用した。憧れていたメジャーリーガーはヤンキースの名遊撃手デレク・ジーターと通算200本塁打の左打者ジョシュ・ハミルトン。挑戦を続け、16歳の時の09年、ツインズと海外FAとして契約。欧州出身では最高額の77万5000ドル(約8525万円)でサインした。

今ではア・リーグ中地区の首位を快走するツインズで主に1番を任され、快進撃の立役者だ。大活躍すれば、欧州でも話題となる。野球普及に最も大事なことは「子どもたちに興味を持ってもらうこと」と考え、母国で野球教室を行ったこともある。「たくさんの子が来てくれた。今後も少しずつやっていきたい」。欧州での野球発展。新たな挑戦にまた、ケプラーは目を輝かせた。【斎藤庸裕】

◆マックス・ケプラー 1993年2月10日、ドイツ生まれ。09年にツインズ入団。15年9月にメジャーデビュー。19年から5年3500万ドル(約38億5000万円)で契約を延長。昨年5月13日にエンゼルス大谷と対戦し、3打数無安打1三振。昨季156試合出場、20本塁打をマークした。193センチ、99キロ。右投げ左打ち。