マリナーズ菊池雄星投手(28)が「マダックス」でメジャー初完封を飾った。18日(日本時間19日)の敵地ブルージェイズ戦に先発し、9回を2安打1四球の8奪三振。6月23日以来の5勝目(8敗)を手にした。要した球数はわずか96球で「マダックス」と呼ばれる100球未満での完封劇。日米通じ自身初、日本投手では大家、黒田、田中に続く4人目の快投で、不振時の鬱憤(うっぷん)を晴らした。

96球目。最後の打者を空振り三振に仕留めると、菊池はグラブを激しくたたいて感情を爆発させた。約2カ月、9試合ぶりの白星を渡米後初の完封で鮮やかに飾り、「初回から思い描いた投球ができた。本当にチームにやっと貢献できた」と安堵(あんど)した。

課題だった直球の球威を取り戻し、ブルージェイズ打線を支配した。初回は先頭から2者連続三振で日米通算1000奪三振を達成。3回は先頭の二塁打で初安打を許したが、その後も積極的にストライクゾーンで勝負。6回以降は、走者すら許さなかった。

軸にしたのは、メジャー移籍後何度もカギと口にしていた「高めの真っすぐ」だった。直球で奪った5三振はすべて高め。さらに、ストレート全43球のうち7割超の31球が高めへのボールだった。「ずっと直球が課題だった。コースも良かったし、カウントも取れた」。女房役のマーフィーも「直球がストライクゾーンの上端にコンスタントにいっていた。そこに安定して投げることができれば、打者は対応に困るからね」と快投の要因を分析した。

これまでの2段モーションを封印したことで球威がよみがえり、制球も安定した。無走者でもクイックモーションで投球。結果が出ない間は、股関節や右足の使い方を変えるなど試行錯誤。フォーム修正を繰り返す中で西武時代と最近の映像を見比べ、「いい球を投げたいと、どんどん力んで動きが硬くなっていることに気付いた」という。クイックで投じることでフォームを簡素化し、力みの発生を排除。「4回くらいから直球のタイミングが合ってきた」という言葉通り、93マイル(約150キロ)以上はすべて4回以降にマークした。

100球未満での完封「マダックス」は、日本人投手4人目の快挙。「なかなかアメリカで完投という機会はない。最近は中継ぎに負担を掛けていたので、すごくうれしい」と喜んだ。7月上旬に誕生した第1子の長男へも、“パパ初勝利”をプレゼント。「ここから残り数試合、強い形で終わって来シーズンにつながるような投球をしたい」と、力強く誓った。