全米野球記者協会(BBWAA)の投票による米国野球殿堂入りメンバーが21日(日本時間22日)発表され、元ヤンキースの主将で名遊撃手のデレク・ジーター氏(45)が、有資格1年目で殿堂入りした。投票では全397票のうち、396票を獲得。得票率99・7%で、わずか1票足らず満票を逃した。

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2001年の地区シリーズ(アスレチックス戦)で見せた伝説のバックトス、額から出血しながらもスタンドへ飛び込んだスーパーキャッチ、華麗なるジャンピングスロー、メジャー屈指のクラッチヒッター…。ジーター氏の選出に異論を唱える者は、おそらく1人もいないだろう。通算3465安打、世界一5回などの実績だけでなく「ザ・キャプテン」と呼ばれたリーダーシップは、世界のスポーツ界を見渡しても、群を抜いていたのではないだろうか。

人種のるつぼと言われるニューヨークを本拠地とする中、アフリカ系米国人の父、白人の母を持つジーター氏は人種を問わず、尊敬された。真っ先にベンチを飛び出して仲間を迎えるなど、その真摯(しんし)なプレースタイルだけではない。一般的に、上下関係を気にしない米国人は監督に対してもファーストネームで呼ぶが、ジーター氏はジョー・トーリ監督を「ジョー」ではなく「ミスター・トーリ」または「ミスターT」と呼んだ。常に指揮官への敬意を払い続けたのも、その人間性ゆえだった。

盟主のリーダーとして、厳しさも持ち合わせていた。移動の際のドレスコードを定める主将として、常にスーツ姿を基本とした。他球団がカジュアル化するのをよそに、紳士の服装を崩さなかった。公式戦が終わり、ポストシーズンが始まる直前、ミーティングで「オープン戦は終わった。これからが本番だ」と鼓舞した逸話は有名で、常に世界一だけを目指し続けた。

ジーターの後にジーターなし-。ヤンキースだけでなく、メジャー全体でもこれほど広く尊敬され、愛された選手は今後、しばらく出てこないだろう。【MLB担当=四竈衛】