レッドソックスに入団した沢村拓一投手(32)が、日刊スポーツに独占コラム「ありのまま」(随時掲載)を執筆する。第1回は「今、感じること」。巨人からロッテへのトレード移籍を経て、メジャー挑戦した剛腕は「個性と自己主張」の重要性を説き、今季の活躍を誓った。

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キャンプ合流から、約1カ月がたった。僕が感じたのは、個性や自己主張は大事だなということ。自己主張と聞くと、わがままとか悪いイメージを持つかもしれないけど、どういう考え方を持ってるかを伝えるのは特別じゃないし、さらけ出した方がいいなと。例えば「こういうサインの出し方をしてほしい」とか、言わないと伝わらない。「ありのまま」の自分を出すことは強く意識している。

個性を出す上で大事なことがある。自分をよく知ることだ。完璧な人間なんていないし、ミスや間違いをする。ただ、その時に「自分はこうじゃないんだけど」じゃなくて、「自分はそうなんだ」と認識することが重要。僕であれば、フォアボールと言われるけど、「出したらいけない」じゃなくて、受け入れようと。そんなふうに考えが変わったのは、去年の経験が大きい。

シーズンの序盤、何でコンディションはいいのに結果が出ないんだろうと。本当に悔しかった。フォアボール、フォアボールとなって、イップスではなかったけど、率直に言うと、ボールを投げるのが怖かったし、マウンドに上がることが怖かった時さえある。

「あぁ、このまま終わっていくんだな。こういうふうに戦力外になっていくんだな」と本気で思った。その時、もう、全部受け入れるしかないなと。「こんなもんじゃない」という気持ちよりは、自分の失態を全て受け入れた。ゆとりというか、どこか許す部分を作ってあげようと思った。

今、振り返ると、自分がやっていることを受け入れたくなかったし、受け入れられなかったんだろうなと。誰もが人からいいふうに思われたいし、人間って、弱い生き物だけど、何かのせいにしてるようじゃ前には進めない。自分の弱さを受け入れることも強さだし、自分を許すことも強さなんだと思う。

アメリカに来て、ネガティブなことを言われたことはない。ブッシュ投手コーチがミーティングで話した言葉が印象的だった。「君たちは成功して、ここに来ている。成功していなかったら、ここにはいないだろう」。合流直後はボールの扱いに苦労したけど、首脳陣は「映像を全部見て、評価した。自分の力を出せば大丈夫だ」と前向きな言葉を掛けてくれた。

日本では「出るくいは打たれる」ということわざがある。打たれないようにするには出過ぎるしかないけど、そんな人間は世界中でも一握り。自分は出過ぎた選手でもないし、メジャーリーグに来てもその思いは変わらない。この先もミスや失敗をするだろう。ただ、自分で選んだ道だから、何でも受け入れられる。

それに…。アメリカに来た時、こう思った。栃木から出てきて、プロ野球に入って、メジャーリーグにも来られた。成功よりも失敗ばかりだったし、最初からうまくいくはずないでしょって(笑い)。今シーズン、僕が何を感じ、何を思ったか。思いの丈を「ありのまま」にしるしていく。(レッドソックス投手)