【アナハイム(米カリフォルニア州)5日(日本時間6日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(26)が、前日のアクシデントの不安を払拭(ふっしょく)する好走塁と気迫を見せた。

歴史的なリアル二刀流から一夜明けたアストロズ戦、2点を追う8回に代打で登場。死球で出塁すると、1死一、三塁から一ゴロの間に絶好のスタートを切り、決勝の勝ち越しホームを踏んだ。終盤の逆転勝ちに貢献する活躍で、チームに3連勝を呼び込んだ。

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走りだした大谷は、すぐにトップスピードに乗った。同点としてなお8回1死一、三塁。三塁走者として打球判断に集中力を研ぎ澄ませた。ウォルシュの一塁への強烈なゴロで絶好のスタートを切った。グリエルから素早い送球が本塁に返されたが、スライディングしながら左手でホームベースをタッチした。鮮やかな走塁で勝ち越しの決勝点をもぎ取り、両手をたたいて喜びを表現した。

リアル二刀流を実現した前日のホワイトソックス戦、5回に本塁ベースカバーで走者と交錯して、転倒した。ふくらはぎ付近に痛みを感じたが、この日の試合前、マドン監督は「状態は良さそうだ」と軽症だったことを明かした。スタメンこそ外れたが、代打で出場して、全力の走塁を見せた。6日(日本時間7日午前5時7分開始予定)のアストロズ戦にはスタメン復帰する見込みで、状態に問題はないようだ。

打席でもアドレナリン全開だった。相手投手スミスから内角スライダーで死球を受けた。怒りを抑えるような表情でスミスをじっと見つめると、グラウンドには一瞬、ピリピリしたムードが漂った。感情をあらわにした大谷について、トラウトは「気持ちが高ぶっていたね。ボールを強く打てているし、彼は打ちたかったんだと思う」と笑顔で代弁。大谷は前日もガッツポーズで気迫を前面に出した。1試合1試合にかける思いが表情にも表れている。

8回の4得点でチームは終盤の逆転勝ちを決めた。存在感を見せ続ける大谷をトラウトは「今季ここまで彼がやっていることは、素晴らしい。僕らが期待していたこと。いい状態を続けていることが、彼にとって大きい」とたたえた。4点差をひっくり返しての3連勝にマドン監督も「我々は諦めない。こういうことがまた出来る」とうなずいた。感情豊かな大谷が、チームに勢いを生んでいる。

○…アストロズの選手が観客から大ブーイングを受けた。19年シーズンオフに、電子機器とゴミ箱を利用した組織的なサイン盗みが明らかになり、当時の監督やGMが解任。選手に対する罰則はなかったが、他球団の選手やファンから非難の対象となった。この日は右翼席からグラウンドにゴミ箱が放り投げられる場面もあった。マドン監督は「ゴミ箱はユニークだね。かつてはビーチボールだったけど、ゴミ箱になった」と話した。

○…ウォルシュが2試合連続でチームの勝利に貢献した。8回1死一、三塁から鋭い球足の一ゴロを放ち、決勝点を演出。大谷をホームに迎え入れた。前日の試合では9回に中堅へサヨナラ本塁打。19年は二刀流に挑戦していたが、昨年打者でブレークし、今季も打者で開幕から存在感を示している。