エンゼルス大谷翔平投手(26)が本来の球威を取り戻す力投を見せたが、今季初黒星を喫した。28日(日本時間29日)のアスレチックス戦に先発し、6回0/3で3安打3失点。前回登板で平均球速が約8・5キロ低下した直球は最速で97・9マイル(約157・6キロ)をマークした。3回無死一塁の場面では1番キャンハの顔付近へ直球が抜け、両軍ベンチから選手が出てくる不穏な空気となったが、冷静に対応。集中力を切らさなかった。チームは打線がつながらず、2連敗となった。

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大谷の対応力が光った。3回無死一塁、2球目の93・3マイル(約150キロ)直球が内角高めに抜けた。激高したキャンハに怒鳴られ、両軍の選手がホーム付近に出てきたが、大谷は動じない。「特に何も考えてなかったです」と苦笑い。それもそのはず、攻めの一環としての1球で「危ないは危なかったですけど、いいバッターなので、しっかりコースに狙って投げないといけないですし、当てるつもりはもちろんない」と、強打者を封じることに徹した結果だった。

沈着冷静なメンタルが直後の投球に表れた。3球目、外角低めいっぱいに直球を決め、ファウル。フルカウントから内角へ、再び体に近い直球を投げ込んだ。この日最速の97・9マイル(約157・6キロ)で空振り三振。マドン監督からは「落ち着いて集中していた。それが素晴らしいと思った」とたたえられた。続く打者から7者連続アウト。大谷攻略に躍起になるア軍打線に淡々と“対処”した。

試合中の修正も効果的だった。走者なしでは左足を上げてから投げるが、2回の先頭からクイック気味に変更した。「指のかかりとかトータルで見たときに、動きの再現性は今日はスライドステップの方が高そうだなと思った」と柔軟に対応。前回登板で平均球速が低下した直球も球威が戻り、「いい動きをすれば勝手に出るのかなと思ってるので。臨機応変に1回1回、1試合1試合、対応出来た」と周囲の不安を一掃した。

今季最多93球の力投は実らなかった。7回の先頭から連続四球と適時打を浴びて降板。「体がちょっと硬いというか、冷えているなと感じていた。あそこをもう1回、しっかりと抑えられるかどうか。いまひとつ粘りきれなかった」と唇をかんだ。今季初黒星を喫したが、防御率は2・72と安定感がある。「勝った、負けたよりは内容がすごい大事。まだまだ(シーズンは)長いので、1回1回反省しながら、次につながればいい」。先を見据える姿も頼もしかった。【斎藤庸裕】

○…大谷は前日のハプニングにも冷静に対応していた。先発予定だったが、チームバスが事故渋滞に巻き込まれ、電車で球場入り。到着時間が大幅に遅れた。「僕の先発がどうのこうのっていうより、その試合で、もしかしたら先発しなきゃいけない投手が早めに準備しないといけないので、なら早めに決めてしまった方がいいのではないかという感じ」と、打者出場に変更となった経緯を明かした。この日も決められた時間のチームバスに乗車。「どうしようもないことなので、その時に一番いい対応ができれば」と淡々と話した。