【アナハイム(米カリフォルニア州)17日(日本時間18日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(26)が相手主砲のいたずら(?)にも負けず、3勝目を挙げた。

タイガース戦に「2番投手」で出場。打者では2四球で1打数無安打も、投げては12年の打撃3冠カブレラからスライダーで2三振を奪うなど、粘りの投球で6回5安打1失点。19年以来となる観客動員100%で行った本拠地の最初の試合。3万709人が見守る中、今季10試合目の登板を勝利で飾った。

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ちょっかいを出されたって、勝負は真剣だ。ヤマ場の6回。大谷はスライダーを多投した。「思ったより曲がりもすごい良かったので、多めに投げました」。2死走者なし。12年の3冠王カブレラを外に逃げるスライダーで空振り三振。「暑かったので、いつもより多めにかいていた」。したたる汗をぬぐいながら78球を投げきった。

試合序盤、最初の“事件”が起きた。第1打席、四球で出塁すると、直前に三振を奪っていた一塁手のカブレラに待ってましたと言わんばかりの表情で出迎えられた。にこやかに何やら会話を交わした後、突然、股間にタッチ。大谷は手を振り払って腰を引いた。

そのカブレラ相手に4回、手元が狂ったのが次の“事件”。スプリットが肩付近に抜け死球。日本流に帽子を脱いで謝意を示した。そして迎えた5回の大谷の打席。再び四球で一塁に歩くと、今度は軽いジャブを繰り出してきた。死球の仕返し? だが、大谷がひと言ボソッと話すと背中をポンポンとたたかれた。

この日はけん制のたびに不必要なほどタッチしてきたり、いじられまくった。大谷は「話しかけてくれたりとか、フレンドリーな感じで接してくれる選手なので、はい、そんな感じでした」と苦笑いでカブレラとのやりとりを振り返った。

敵のいたずらにも動じず、勝つことに集中した。味方が中継プレーで三塁打を阻止したり、守備シフトが生きて、中前に抜けそうな当たりがアウトになるなど「かなり助けられましたし、ほんとにそこに尽きる感じかなと思う」と味方の好守備のたびにガッツポーズを繰り返した。

観客動員100%となった今季初戦。3万709人の前で主役になった。「気持ちよかったですね。打席でもマウンドでも、より集中できると思うので、入ってもらってすごくうれしい」。チームの連敗を3で止め、メジャー1年目に並ぶ10登板で3勝目。ファンも、相手選手も二刀流に首ったけだ。

◆ミゲル・カブレラ 1983年4月18日、ベネズエラ生まれ。99年に16歳でマーリンズと契約し、03年6月20日に20歳でデビューし新人だった同年に世界一を達成。07年12月にトレードでタイガースに移籍。11年に2冠、12年に3冠とMVPに輝き、13年に2年連続MVP選出。首位打者は4度、球宴選出は11度。愛称はミギー。コロナ禍中にスペイン語のラップ音楽をリリースした。193センチ、121キロ。右投げ右打ち。

▼大谷が6回1失点で3勝目。前回先発からは中5日で、中5日で先発は今年の5月5日レイズ戦→11日アストロズ戦に次ぎ、メジャー2度目。日本ハム時代の16年にも9月7日ロッテ戦→13日オリックス戦の1度あるが、過去はいずれも勝ち負けなしで、中5日で白星は自身初めて。