投打のレジェンド2人に厳しい審判が下った。全米野球記者協会(BBWAA)による今年の米野球殿堂入りの投票結果が25日(日本時間26日)に発表され、歴代最多762本塁打を記録したバリー・ボンズ氏(57=元ジャイアンツ)と、サイ・ヤング賞を歴代最多7度受賞したロジャー・クレメンス氏(59=元ヤンキース)が落選した。

ともに候補資格は今年が最終年の10年目。現役時代に使用疑惑が浮上した薬物スキャンダルの逆風により、規定得票率の75%を満たすことなく、記者投票での選出資格を喪失した。

【投票結果一覧】D・オルティス氏が307票で米野球殿堂入り

殿堂入りへの風当たりは、最後まで強いものだった。ボンズ氏は36票(66・0%)、クレメンス氏は39票(65・2%)足りず、ともに10度目の「審判」を仰いだが、今年も選出条件の75%には届かなかった。現役時に圧倒的な数字を残しながら、ステロイド(筋肉増強剤)などの薬物スキャンダルで汚点を残し、ついにBBWAA選出による殿堂資格まで失った。ESPN電子版が「ボンズ氏落選なら、野球殿堂は失敗」と厳しい論調の記事を掲載するなど、球界がざわついた。

ボンズ氏は発表後、自身のインスタグラムを更新したが落選には触れず、ただ1人選出されたオルティス氏に「野球殿堂入りおめでとう、ビッグ・パピ。実にふさわしい選出だ。愛しているよ、マイブラザー」と祝福のコメントを寄せた。

クレメンス氏も自身のツイッターで声明を発表。「私と私の家族は、野球殿堂のことは10年前に忘れた。私は、殿堂入りするために野球をしていたわけではない。家族とファンのサポートに感謝する」とつづった。

ただ、2人に殿堂入りの扉が完全に閉ざされたわけではない。同じくBBWAAによる資格を喪失した216勝のカート・シリング氏(55=元レッドソックス)、609本塁打のサミー・ソーサ氏(53=元カブス)らとともに今後、ベテランズ委員会による選出に望みを託すことになった。早ければ、今年12月にも候補入りの可能性がある。

16人で構成される同委員会には殿堂入りしたOB選手、球界幹部、ベテラン記者が名を連ねており、12人の得票で選出される。過去にも、元タイガース投手のジャック・モリス氏(66)が資格喪失から4年後に選出されるなど、落選選手が救済されるケースがある。一方で、野球賭博で永久追放された歴代最多4256安打のピート・ローズ氏(80=元レッズ)は、いまだに「復権」を許されていない。

ボンズ氏に限れば、シーズン歴代最多73本塁打をマークした36歳時の01年まで、ステロイドなどの薬物使用は「セーフ」だったのも事実。古巣であるジャイアンツは公式ツイッターで、「彼が次のプロセスで殿堂に選出されることを期待する」と声明を出した。

◆ベテランズ委員会の選出 時代を4つに区切り、1年ごとに違う時代の活躍者を選ぶ。今年12月は、1988年から現在の「今日の試合」で活躍した人物をノミネートし、23年に投票する。17年に資格喪失した通算478セーブのリー・スミス氏、11年に喪失の通算2866安打のハロルド・ベインズ氏らが、19年にこの方法で殿堂入りした。過去2度の「今日の試合委員会」では2人ずつ計4人が選出された。

◆薬物スキャンダル MLBは2000年代初頭、本塁打量産期を迎えた。間もなく、栄養食品会社BALCOが選手にステロイドを供給している問題が発覚。03年頃に、専属トレーナーの関与などからボンズ氏の薬物疑惑が浮上。06年にMLBが禁止薬物の調査を開始し、担当者の名前から呼ばれた調査結果「ミッチェル・リポート」は07年12月に公表された。過去にステロイドを使用した選手80人以上が名を連ね、ボンズ氏、クレメンス氏らの名前もあって球界を大きく揺るがせた。02年からステロイドなどの使用は禁止され、薬物検査も始まった。05年からは薬物規定違反の罰則が強化され、初違反で現在は80試合の出場停止。

◆ボンズの主な記録 

通算最多762本塁打

通算最多2558四球

通算最多688敬遠

シーズン最多73本塁打(01年)

シーズン最高長打率8割6分3厘(01年)

シーズン最高出塁率6割9厘(04年)

シーズン最高OPS1・422(04年)

シーズン最多四球232(04年)

シーズン最多敬遠120(04年)

唯一の500本塁打&500盗塁(400本塁打&400盗塁も唯一)

◆クレメンスの主な記録

通算

通算最多サイ・ヤング賞(7度)

通算354勝(9位)

通算4672奪三振(3位)

1試合(9回)最多奪三振タイ20(2度は唯一)