大リーグでは今季「ボールが飛ばない」と話題になっている。13日までの1試合あたりの本塁打数が2・09本と、昨年の2・45本から減少。15年以来の低水準となった。今季は、21年から新仕様となったボールが開幕から全球使われ、全球場での湿度管理も始まった。「ボールが柔らかくなった」と証言する選手も多い。どんな変化があったのか、深堀りする。【大リーグ特別取材班】

ヤンキースタジアムで5月31日(日本時間6月1日)、エンゼルス大谷翔平投手(27)がジャッジ外野手に捕られたフェンス際の打球も、昨年までなら本塁打となっていたかもしれない。大リーグは今季、本塁打率が激減した。打球の飛距離が落ちた。長打になりやすいバレル(打球速度が98マイル=約158キロ=以上なら26~30度)の打球が昨季より4フィート(約1・3メートル)飛ばなくなっている。ボールの変化が大きな理由として挙げられる。

昨年からMLBは、新しいボールを導入していた。芯材の毛糸の巻き方を緩め、近年、上限に近づく傾向にあった反発率(0・530~0・570)を下げることを目指した。公式球はローリングス社の独占供給で手縫い。中米のコスタリカの工場で製造されているが、コロナ禍もあり、製造や供給が遅れた。このため、昨年は以前までのボールと混在。今季開幕からようやく、新工程のボールが全試合の全球で使われることになった。

ボールの保管方法も変わった。昨年までは、高地のため空気抵抗が少なく飛距離が出やすいコロラド、砂漠のため乾燥しているアリゾナなど10球場では湿度を管理するため保湿器に入れていた。今季はこれを全30球場に拡大。ボールは湿度によって、芯材を巻く糸が伸縮するという。

ボールが変わったことを選手も実感している。大谷は投手目線での感覚として「なんか柔らかい、ソフトだなっていう印象はありますけど。なので全体的にゴロを打たせるような感じのピッチングの方が比較的、いい数字が残る確率は高いかなと思います」と話している。他にも感触の違いを口にする選手が多数おり、保管湿度の変化が、触り心地や滑りやすさ(にくさ)に影響している可能性もある。投手が手につける、粘着物質の取り締まり強化から1年。メジャーリーグのボールは、新たな変化を迎えている。