【オークランド(米カリフォルニア州)3月30日(日本時間同31日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(28)が、23年度バージョンの二刀流を披露した。アスレチックスとの開幕戦に「3番DH兼投手」で出場し、投手では6回2安打無失点。シュート気味に落ちるスプリット、鋭角に曲がるスイーパー、最速100・7マイル(約162キロ)のフォーシームを有効に使い、10奪三振を奪った。打者では3打数1安打。チームは救援陣が踏ん張れず、逆転負けを喫した。

   ◇   ◇   ◇

今季の大谷も、やっぱりえげつない。4回1死二、三塁、ピンチを迎えた。長打のある右打者アギラをフォーシームで追い込むと、内角へシュートする149キロのスプリットを落とした。横の曲がり幅は38センチ。球場表示ではシンカーだったが、大谷は「スプリットです」と明かした。ボールの回転や軌道から自動的に球種を割り出すMLBの計測システムでは、もはや判別できない。それほどの変化量だった。

曲がるスプリットは昨季から既に取り組んでいるが、今季は開幕戦から最大限に生きた。スライダーより球速が速く、鋭角に曲がるスイーパーがこの日も切れ味を発揮。3回まで27球の変化球のうち、23球と徹底して打者に意識づけた。外角へ逃げるスイーパーとは逆方向に曲がるスプリットなだけに、攻略は至難の業。空振り三振に倒れたメジャー通算109発のアギラは「まっすぐ落ちるのではなく、シュートして、チェンジアップのようだった。彼は今、MLBで最高の選手だ」と脱帽だった。

2日前のブルペンではスプリットを中心に各球種の精度を確認。1球ごとに数値を把握し、準備を徹底した。「基本的にどんな打者でもシチュエーションでも、練習通りの動き方をできれば、いつも通りのパフォーマンスがしっかりできる」。ピンチでギアを上げ、失点を防ぐ姿は変わらない。「スライダーでもスプリットでも良かったですけど、一番(打ちとれる)可能性の高いボールを選択して投げたという感じです」と、最速100・7マイル(約162キロ)の直球も生きた。

プレーオフ進出を目指す中での23年初戦は逆転負け。「もう1回タイに持っていく集中力がチーム全体として出てくれば、もっともっといいゲームになるかなと思います」。だが戦いは始まったばかりだ。

2年連続で大役を任されたが、今季はWBC優勝から10日もたたない中での開幕マウンド。「開幕投手は特別なことではあるんですけど、感じ的には、WBCのクローザーでいったときの方が緊張はしていたので。気持ちも上がる、出力も出る場面をこなせたのはプラス」と前向きに捉えた。年々、進化を遂げる投球術。メジャー6年目の初戦で、その一端を示した。

○…一、二塁間を固める「大谷シフト」が禁止となった今季、開幕戦から新ルールの恩恵を受けた初安打が生まれた。4回無死一塁、左腕ミュラーの直球を捉え、二塁手の横を抜く右前打。大谷は「これまでが左バッターに不利すぎたなっていうのがまず1つ。これでイーブンになっているんじゃないかなと」。この日は打者では3打数1安打。1日の休養日を挟み、4月1日(日本時間2日)の2戦目で藤浪と対戦する。「やることは変わらないので、久々に(藤浪の打席に)立ちますし、どんな球なのかちょっと分からないですけど、まだデータを見てないので、そこら辺も見ながら臨みたい」と語った。

【関連記事】大谷翔平開幕戦 6回無失点毎回10K好投も逆転負けで今季初勝利逃す 打は今季初安打/詳細>>