【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)8日(日本時間9日)=斎藤庸裕】とんでもない1日となった。エンゼルスからFAとなっている大谷翔平投手(29)の動向を探るため、周囲の狂乱は歯止めがきかなくなった。有力候補のドジャースではなく、ブルージェイズ移籍を決意し、カナダ・トロントへ向かったとうわさが流れれば、大谷は自宅にいて、決断はまだしていない、と否定する情報が飛び交った。Xデーは近いとされるなか、大谷サイドはこの日も沈黙。果たして、どうなるのか…。

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この日、世界中で一体どれだけ多くの人が、大谷の動向をスマートフォンの画面で追いかけたのだろうか。二刀流の未来が決まるXデーかと期待された「12月8日」。ブルージェイズ移籍へ、カナダ・トロントへ向かったとの一報に周囲はさらに沸いた。午前9時40分、カリフォルニア州アナハイムから同地へプライベートジェット機が飛んだ。肉眼で大谷の姿を目撃した情報はない。だが、カナダのCBCカメラマンは着陸の瞬間を捉えに、動いた。ふたを開けてみれば大谷ではなく、ビジネスマンだった。

ことの発端は現地時間8日午前に、MLBネットワークのジョン・モロシ記者が「ショウヘイ・オオタニの決断が秒読み段階に入った。恐らく早ければ今日中に決まる」とX(旧ツイッター)に投稿したことだった。さらにブルージェイズが最終候補の1つとして急浮上しているとし、ヒートアップした。

今日決まる、決まらない。トロントへ飛んだ、飛んでない、自宅にいる。大谷は決断した、していない。不確定の情報が散乱した。「ブ軍が午後6時、大谷と合意の会見を開く」とのうわさまで飛び交うほどだった。カナダ・トロントは、歴史的FAの結末に期待をふくらませた。だが結局、何も起こらなかった。ドジャースの球団関係者の1人は口を閉ざし、エンゼルスの関係者も交渉過程を全く把握していない。ニュース速報のつぶやき合戦が異常にヒートアップするばかりで、沈黙が続いている。

大谷がトロントに向かっている、と重ねて情報を流したモロシ記者は謝罪する事態にまで追い込まれた。トロントの空港なのか、大谷と水原一平通訳、ネズ・バレロ代理人が3人で歩く動画や、新調されたエンゼルスの背番号「17」のユニホームが届けられる動画(過去のもの)も投稿された。もはや、SNS上では誤報で遊び出すような空気に発展。サンディエゴ州立大学の野球部公式X(旧ツイッター)では「ショウヘイ、ようこそ」とつづり、大学のユニホームを着用した合成写真が添えられた。

肉眼で確認したわけではなく、ある関係者からの話をいち早くニュースで流すのは、この時代では仕方ないことかもしれない。自戒を込めてだが、情報の取り扱いには気をつけなくてはいけない。だが、今回の大谷の去就は、過去に前例がないほどの、とてつもない注目度がある。この日のXでも「Ohtani」のワードがトレンド世界1位。前代未聞の騒動が、間違いなくうねりを巻き起こした。