【ソウル(韓国)19日=斎藤直樹】打倒大谷、打倒ドジャースへ準備万全だ。パドレスの開幕投手を務めるダルビッシュ有(37)が、高尺スカイドームのマウンドに立った。キャッチボールの後、ボールを手にしシャドーピッチング。けん制の動きまで入れる念の入れようで、大谷翔平が2番に入るとみられるドジャース打線を想定した。日本人最多4度目の開幕投手で、初白星を目指す。

ダルビッシュが、試合本番を想定し、ドジャース打線と脳内で対峙(たいじ)した。開幕戦の前日練習。変化球を交えて外野でキャッチボールを行った後、堀江通訳を伴いマウンドへ。野手陣のバント練習終了後、マウンドのシートが外された。訪韓から5日目。右腕がついに開幕戦の地、高尺スカイドームのマウンドに立った。高さ、土の硬さ、ブルペンとの違い、見える景色。チェック項目はたくさんある。だが、これだけで終わらないのが、理論派のダルビッシュたるゆえんだ。

まるで、本当に“対戦相手”がいるかのようなシミュレーションだった。ド軍打線は1番ベッツ、2番大谷、3番フリーマンとMVPトリオから始まる。サインを合わせてから、セットポジションに入る。握りはいつも通り、フォークの握りからグラブの中で変える。ボールは投げないシャドーピッチングだが、フォームはストライドの長い本番仕様だ。ロジンバッグを拾うようなしぐさも見られた。長く球を持ったり、クイックモーションを入れたり…。本番さながらに幻惑も交えた。

20球目の前には、一塁けん制の構えを見せた。23球目の前には、走者が二塁に進んだようだ。サインプレーとなる二塁けん制を行い、後方に足を踏み出す位置やマウンドの角度を確かめた。29球を脳内で投げ終えると、両足スパイクの裏をジャンプして合わせ、土を払ってマウンドを降りた。神は細部に宿る。動作とマウンドの状態を丁寧に確認し、練習を終えると無言で引き揚げた。

前日の会見では大谷に関し「今回は敵として戦うので、勉強して、あまり私情は入れずに、1人の打者として対戦したいと思います」と宣言していた。本番までにデータを読み込み、抑え込む道筋を完成させる。打者1人を完了し試合が成立すれば、メジャー実働12年目は野茂英雄と並び日本人最長。勝ち星がつけば、日本人最年長記録となる。MVPトリオをぶった切り、30球団で最初の白星を狙う。

 

<ダルビッシュデータ>

▼37歳7カ月のダルビッシュが開幕戦に登板。日本人投手の開幕投手では04年野茂、22年ダルビッシュの各35歳7カ月を上回る最年長になる。日本人投手で4度目の開幕投手は田中将大に並ぶ最多タイ。過去3度は勝敗がなく、野茂(2勝)、黒田、田中に次ぐ4人目の白星なるか。

▼ダルビッシュは大谷と初対戦。過去に日本人打者5人と対戦し、まだ本塁打を許していない。

▼ダルビッシュは日米通算196勝(日本93勝、米国103勝)。勝てば日米通算勝利で田中将大(楽天)の197勝(日本119勝、米国78勝)に並ぶ。