【ソウル(韓国)20日=斎藤庸裕】ドジャース大谷翔平投手(29)が、歴史的安打を放った。パドレスとの開幕戦で、199日ぶりに打者で復帰。昨春のWBCでともに戦い、憧れの存在だったダルビッシュ有投手(37)と初対戦し、2打席目で右前打を放った。ドジャース移籍後初となるメモリアル安打の直後には二盗を決め、日米通算100盗塁に到達。8回にはマルチ安打となる適時打で開幕戦白星発進に貢献した。世界のプロスポーツ史上最高額となる10年総額7億ドル(当時レート約1015億円)の男が、開幕戦から存在感を発揮した。

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懸命な姿勢でチームを鼓舞した。7回の第4打席、間一髪アウトとなったが、投ゴロで全力疾走した。8回の第5打席の直前、1番ベッツの適時打からヘッドスライディングで生還した若手のアウトマンと本塁ベース付近でグータッチ。背中を軽くたたき、好走塁をたたえた。「勝てたのが一番。終盤で逆転できるのは強いチームじゃないかなと。こういう試合が多ければおのずと勝ちが増えてくる」。勝ち方に手応えを得た。

大谷の意識は明らかに変わってきている。メジャー7年目。今や、チームだけでなく野球界を背負う存在だ。その責任感を受け止めている。むしろ、それを意気に感じているような、楽しそうな笑顔が見られる。新天地であろうが、関係ない。エンゼルス時代の早年には見られなかったリーダーシップが、堂々たる雰囲気から湧き出ている。

米アリゾナ州のキャンプでは、自ら動いた。新たな同僚とのコミュニケーションはもちろん、野手全体のウオームアップにはほぼ毎回参加し、野球以外ではチキンウイング早食い競争など球団イベントにも姿を見せた。なじむだけではない。監督、同僚、関係者と一緒に笑い、一体感を生み出すのに足を運んだ。ロバーツ監督は「彼は万全の状態を維持するためにやるべきこと1つに集中すると聞いていたが、私の期待以上に(周囲と)関わりを持ってくれている」と感心した。

英語も上達し、意見交換もよりスムーズに出来るようになった。エ軍時代の1年目を知るド軍のイブル三塁コーチは「最初の年は(何かあっても)見ているしかなかったと思う。だが今は、何か感じることがあれば発言できる」と違いを指摘。リーダーシップをとる選手について同コーチはベッツ、フリーマン、ヘイワードらベテラン勢を挙げたが「ショウヘイには存在感がある。みんなが彼のやっていることを観察し、選手は質問をする。それにショウヘイも応えている。非常にいい雰囲気だね」と明かし、クラブハウス内での交流が結束力を高めている。

“大谷依存”で勝てない日々が続いたエンゼルスとは違う。下位打線と主力が融合し、終盤の逆転劇を生んだ。個々の力だけでなく、「勝つ集団」になる必要がある。その1つのピースとして、先頭に立っていく気概が行動に表れている。強靱(きょうじん)な肉体が年々、大きくなって見えるのは、目に見えない“リーダー感”が同居しているからこそだ。パフォーマンスだけではない。大谷の進化は、内面からもにじみ出ている。【斎藤庸裕】

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