【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)25日(日本時間26日)=四竈衛】元通訳の水原一平氏(39)による違法賭博問題に関して、ドジャース大谷翔平投手(29)が、ドジャースタジアムで事件発覚後初めて記者会見を行い、賭博や負債送金などへの関与を全面的に否定した。今回の事件を「悲しいというか、ショック」と受け止めつつ、11分に渡って自らの意思で胸中を明かし、28日(同29日)の米国一斉開幕へ向け“リセット”した。

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はた目にはいつもと変わらず、落ち着いた表情で、大谷はここ数日間の複雑な胸の内を実直な言葉で紡いだ。米国時間の20日(日本時間21日)に遠征中の韓国で事件が明るみに出て以来、球団広報らに徹底ガードされたこともあり、沈黙を保ってきた。グラウンド上で屈託のない笑顔を振りまく一方で、メジャー挑戦以来、公私にわたって最も信頼してきた相棒の裏切りに「悲しいというか、ショック」という思いをグッと胸にしまい込み、日々を過ごしてきた。

ただ、このまま、黙っておくわけにもいかない。28日に米国開幕を控え、ファンに対してだけでなく、大谷自身にとっても、明確に“リセット”する機会が必要だった。会見の冒頭で「僕も話したかった」と切り出したのは、紛れもない本音だ。

球団側からは、事前に「会見は質疑応答なし。写真、動画撮影は禁止で、大谷からのステートメント(声明)のみ」と告知されていた。それでも、大谷はあらかじめ用意された文言を棒読みするのではなく、メモ書きされた項目を確認しながら、事件の経緯と事実関係を丁寧に明かした。韓国での開幕戦後のチームミーティング、ホテルへ帰った後の水原氏との1対1の話し合い、代理人との事実確認など、これまでメディア先行だった断片的な情報を、通訳を挟みながら、ほぼ時系列でたどった。

一方で、微妙な感情の揺れものぞかせた。当初「信頼していた方」との呼称は、途中で「彼」となり、後半は日頃と同じ「一平さん」に変わった。いつになく、少しずつ早口になり、「正直、ショックという言葉が正しいとは思わないですし…」と口にすると、一瞬、声が詰まりそうになる光景も。「言葉にするのが難しいなと思っています」。的確な表現が思い付かないほど、複雑な思いが交錯していた。

今後、MLBなどの調査が進められるため、現時点で処遇は明確になっていない。送金に使われた口座や水原氏の手口など詳細については、当局の捜査を待って、今後、明らかになっていくものとみられる。だが、大谷がすべてのスポーツ賭博への関与、ブックメーカーへの送金許可などを全面的に否定したことで、大谷自身が「厳しい1週間」と表現した騒動は、ひとまず収束に向かう見込みだ。「今日は、まずお話しできて良かったと思っています」。会見を締めくくった誠実な言葉に、苦悩の日々と人間性がにじみ出ていた。