<パドレス1-4ドジャース>◇6日(日本時間7日)◇ペトコパーク

 【サンディエゴ(米カリフォルニア州)6日(日本時間7日)=四竈衛】メジャー2年目のドジャース黒田博樹投手(34)が、日本人3人目の開幕投手として先発し、03年野茂以来となる開幕戦勝利を挙げた。パドレス戦に先発し、5回2/3を投げて4安打1失点。相手は、07年サイヤング賞で、ドジャース相手に11連勝中のジェイク・ピービ投手(27)。ペトコ・パーク開場以来最多の4万5496人の前で投げ勝った。

 野茂、松坂に次ぐ日本人3人目の開幕投手を務めた黒田は、にこやかな笑顔で試合を振り返った。「思ったより緊張もなく、試合に入っていけました。相手の投手はメジャーを代表するピービ。その彼と投げ合えて、チームが勝った。今日に関しては満足しています」。2点リードの6回裏2死満塁。トーリ監督に交代を告げられた瞬間は、さすがに悔しさを隠せなかった。だが、力を尽くした結果に、不満を挟む余地はなかった。

 初回、味方打線が2点を先行した。それでも、今季初マウンドに向かう黒田に「守り」の意識は皆無だった。「楽になるなんて、まったくなかった。攻めの気持ちでいきました。守りに入ると、足をすくわれますから」。フォーク、スライダーの変化球がいまひとつと判断する一方で、最速151キロの速球にシュート、カットボールを多用。ペトコパークの広さを考慮しつつ、大胆に攻め続けた。

 メジャー1年目の昨季。ローテの一角を担ったものの、中盤以降は右肩が悲鳴を上げる寸前で、常に不安が付きまとった。今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)出場を辞退したのも、日本代表としてベストの状態を保つことを困難と判断したからだった。それでも、キャンプ途中には、首脳陣から開幕投手を言い渡された。「英語がしゃべれないのに、開幕に使ってくれて感謝しています」。意気に感じる感覚は、広島時代と同じだった。

 開幕投手としての重圧は、痛いほど感じた。日本式の「尾頭付きのタイ」「赤飯」などの出陣式はなく、家族の観戦も断った。ただ、前夜は、サンディエゴ市内のすし店へ足を運んだ。同地で行われたWBC2次ラウンドの際、日本代表の原監督が訪れたと聞き、「勝ち運」にあやかろうと、珍しく縁起を担いだ。「不安だけでした。楽しいと思ったことはありません」。

 昨年4月4日、初登板初勝利を挙げたのも、同地でのパ軍戦だった。だが、この日の白星は、ひと味もふた味も違った。「昨年のうれしさは忘れましたし、昨年以上にうれしい。誰もが開幕のマウンドに立てるわけではないですから」。黒田の言葉には、エースの風格があふれていた。