<マリナーズ1-3ヤンキース>◇8日(日本時間9日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)=木崎英夫通信員】マリナーズのイチロー外野手(36)がヤンキース先発のぺティットと女性ファンを攻略した。0-0の6回無死一、二塁の第3打席、真ん中に甘く入る初球の84マイル(約135キロ)カットボールを投前左へ絶妙なバント。送球はイチローの背中を通過する悪送球となり二塁走者が一気に先制のホームを踏んだ。初回にも遊撃内野安打を放ち、9試合ぶりのマルチで10試合連続安打とした。

 守備でも沸かせた。1回、右翼へのファウルを追いかけ、スタンドに差し出した左腕のひじが最前列の女性の頭に接触した。「Are

 you

 OK?」と声を掛け、気遣うように左太ももを軽くたたいて定位置へ戻っていった。イチローとグティエレスのファンの17歳のアリス・スキナ-さんは大興奮。何度も座席で跳びはね、両手を胸やホオに当て「Oh

 my

 God!」を連呼した。「スターに出会うことってこんなにドキドキするのね。ファウルボールは怖くて死ぬかと思ったわ。でも気分は最高。彼と話が出来る人なんてめったにいないわ。彼が心配して私に触ってくれたのよ。夢がかなったわ」。興奮冷めやらぬ姿が何度もテレビ中継に映し出され、テレビを見ていた妹から携帯電話に電話までかかってきた。

 しかしチームはヤ軍を攻略しきれなかった。8回に同点に追いつかれ、9回には2死二、三塁でロドリゲスに決勝の2点右前打を許して敗れた。イチローは先制点に結びつけるバント安打には「答える気力がないね」と一言。4試合連続の逆転負けにへこみ具合も大きかった。