【フェニックス(米アリゾナ州)26日(日本時間27日)=広重竜太郎】アスレチックス松井秀喜外野手(36)が遅刻で4番デビューを果たした。2度目の紅白戦に「3番DH」で出場予定が、室内でのトレーニングに没頭して試合開始に気付かず、2番打者が打っている途中でベンチに到着。打順は4番に変更され、2打数無安打で初アーチはお預けとなった。数々の遅刻伝説を持つ緑ゴジラが新天地でも新たなエピソードを加えた。

 ベストセラー「不動心」を著書に持つ松井も、さすがに慌てていた。紅白戦の1回表。練習を普通にこなしていた松井の姿がベンチにない。2番打者が打席に入っても現れず、仕方なく4番のラローチェがネクストバッターズサークルで出番を待った。もう間に合わない-。その時だ。松井が小走りでベンチへ走ってきた。急いでヘルメットをかぶり登場しようとしたが、ゲレン監督から「次でいい」と言われた。ギリギリセーフも結局、今季構想打順の1つである4番を任された。

 巨人、ヤンキース時代から数々の遅刻伝説をつくってきた。だが現場にいるのにもかかわらず、打席に遅刻しそうになったのは初めてだろう。松井は苦笑いを浮かべ、内幕を明かした。

 松井

 まだ始まらないと思い、準備運動のつもりでちょっと自転車をこいでいた。そうしたら「次だよ」と言われた。プレーボールしそうな雰囲気じゃなかったから、まだ大丈夫だと思ってゆっくりやっていた。

 注目度と遅刻劇で4番まで“昇格”した。実は当初予定では1番での出場。スキナー・ベンチコーチが早く予定の2打席が回るように打順を組んだが、ゲレン監督は3番に変更させた。「もし1番に置いたら、記者への説明に15分かかってしまう。『今年は50盗塁を期待している』とね。打席が早く回るためだけなら3番でいい」。ゲレン監督は試合前、3番は首脳陣の配慮であることを30秒で記者に説明できた。だが松井のうっかりミスで、図らずとも4番に就いた。

 今キャンプは遅刻もなく優等出勤。プロ意識の高さを知る首脳陣から、おとがめはもちろんなかった。ゲレン監督は「予定より少し早く始まったから、自分たちの責任」と、かばった。その言葉を伝え聞いた松井は「監督は気を使ってくれたのでしょう。普通だったら怒られるよ」と恐縮気味だった。

 24日の初の紅白戦では5番DHで出場し、初打席で中前適時打。しかし、オープン戦前最後の実戦となったこの日は「2球とも甘いボールだったが詰まった」と一ゴロ、三ゴロで汚名返上も、初アーチもならなかった。オープン戦初陣は28日の古巣エンゼルス戦。「行ってみないと、どういう気持ちになるか分からない。でも楽しみ」。初陣前のハプニングで、緑ゴジラが新天地でも大物感を漂わせた。