<ア地区シリーズ:ロイヤルズ8-3エンゼルス>◇5日(日本時間6日)◇第3戦◇カウフマンスタジアム

 【カンザスシティー(米ミズーリ州)=佐藤直子通信員】ロイヤルズ(ワイルドカード)がエンゼルス(西地区1位)を破り、3連勝として29年ぶりのリーグ優勝決定シリーズ進出を決めた。青木宣親外野手(32)は3安打1打点、2得点1四球の活躍で、85年のフランク・ホワイトとジョージ・ブレットに次ぐ球団史上3人目となるプレーオフ全打席出塁を記録。勢いづくロ軍は10日から敵地に乗り込み、同じく3連勝で進出を決めたオリオールズとリーグ優勝を争う。

 ロイヤルズの守護神ホランドが、エンゼルスの主砲トラウトを空振り三振に切った瞬間、ダッグアウトに控えていた青木は真っ先にグラウンドへ飛び出した。歓喜の輪の中で跳び上がり、抱き合い、3連勝が夢でないことを確かめ合った。

 きっかけは青木のバットだった。1回表にトラウトに先制弾を許し嫌なムードになりかけた。だがその裏、青木の左前打から安打と四球で2死満塁とすると、生え抜きのゴードンが走者一掃の逆転中越え二塁打を放ち、一気にロ軍ペースに持ち込んだ。「あそこだと思う。看板打者が打ってエンゼルスの雰囲気が変わりそうだった。その裏に点が取れ、結果、点差が開いた」とうなずいた。プレーオフでは試合前時点で13打数1安打と振るわなかった鬱憤(うっぷん)を晴らし、6回に代走を出されるまで全4打席出塁した。

 29年ぶりのプレーオフ出場に、当初は浮足立っていたチームに頼もしさが生まれた。ワイルドカードゲームは延長戦でサヨナラ勝ちし、地区シリーズでは第1戦、第2戦を延長でものにした。重要な局面を1つずつ乗り越えながら、チームとして結束を強め、成長し続けている。

 青木

 硬くなる感じは全然ない。苦しい試合を取ったっていうのが勢いを感じさせるし、それを自信に変えているような気がする。

 地元ファンの熱い声援もチームに自信を与えてくれる。5回から降り出した雨の中、客席をチームカラーの青に染めたファンは誰一人として席を立たず、ぬれながら大声援を送り続けた。ファンと一緒に祝いたいという思いに突き動かされた選手たちは、1本1万5000円相当のドンペリニヨン2004年をふんだんに使ったシャンパンファイトの途中で次々とグラウンドへ飛び出し、球場に残ったファンのためにウイニングランで応えた。

 青木

 ファンの笑顔を見ていると本当にうれしくなる。もっともっとファンと喜びを分かち合えるように頑張ります。

 世界一を手に入れるまで、越える壁はあと2つ。まずはリーグ優勝をつかみとる。

 ▼ロイヤルズは今季シーズン最高勝率のエンゼルスを破り、リーグ優勝決定シリーズ進出が決定。ワールドシリーズ以外のシリーズが始まった69年以降、最高勝率チームが1勝も出来ずに敗戦したのは2度目。ロ軍は大物食いで、80年リーグ優勝決定シリーズでシーズン最高勝率のヤンキースも3勝0敗で破っている。

 ▼ロイヤルズはワイルドカード(WC)ゲームから4連勝。WCゲームは12年からで、初戦から4連勝したチームは初めて。またWCゲームから地区シリーズを勝ち上がってリーグ優勝決定シリーズに進出したのは、12年カージナルス以来2度目。だがワールドシリーズ進出チームは過去にない。

 ▼青木がポストシーズン初の猛打賞(1試合3安打以上)。日本人大リーガーのポストシーズンでの猛打賞は過去に松井秀(6度)イチロー(4度)松井稼(2度)岩村(1度)の4人がマークしており、通算5人目(14度目)。1試合最多は04年リーグ優勝決定戦で松井秀(ヤンキース)が放った5安打。

 ◆ジョージ・ブレットとフランク・ホワイト

 ともに内野手として85年ロイヤルズのワールドシリーズ制覇に貢献。ジョージ・ブレット氏(61)は現在ロ軍の球団副社長。ロ軍一筋で21年間プレーし、通算3154安打、317本塁打を放って99年に米野球殿堂入り。首位打者3度、球宴には76年から13年連続で選出された。フランク・ホワイト氏(64)もロ軍一筋18年。名二塁手でゴールドグラブ賞を6年連続含む8度受賞。現役時代の背番号「20」は永久欠番になっている。