<ナ・リーグ優勝決定シリーズ:ジャイアンツ6-3カージナルス>◇第5戦◇16日(日本時間17日)◇AT&Tパーク

 サヨナラの打球は声援を受けてぐんぐん伸び、右翼フェンスを越えた。3-3の9回1死一、二塁。ジャイアンツ(ワイルドカード)の日系4世、トラビス・イシカワ外野手(31)が劇的な3ランを放った。4勝1敗でカージナルス(中地区)を破りナ・リーグ制覇。2年ぶりのワールドシリーズ(WS)進出を決め「このチームは絶対に諦めない。自分もその一員だ」と感涙にむせんだ。

 シアトル出身でヤンキース・イチローのファンというイシカワは、4月にマイナー契約でジ軍に戻った苦労人だ。4年ぶりの古巣では夏場から左脇腹痛のモースの代役を務め、懸命なプレーで生き残った。攻守で存在感を示し、今シリーズから復帰したモースを控えに追いやっている。ボウチー監督も「彼のここまでの物語を考えると、本当にうれしい」とたたえた。

 一丸となった。1点を追う8回、そのモースが「自分も負けられない」と意地を見せ、代打で左越えに同点ソロ。競争意識がチームを加速させている証しだ。先発左腕バムガーナーが、8回3失点とMVPに選ばれる好投を見せると、救援陣も無失点でしのいだ。

 近代野球とされる1900年以降、20度目のWS出場だ。世界一に輝いた10年と12年は地区優勝も飾った。今季はワイルドカードから晴れ舞台へ。21日(日本時間22日)からの頂上決戦では、青木が所属するロイヤルズと顔を合わせる。ボウチー監督は「このチームには不屈の精神が宿っている。やるべきことも分かっている」。自軍への絶大な信頼と自信を見せた。<ジャイアンツ記録メモ>

 ◆WC同士の対戦は12年ぶり

 ワールドシリーズ(WS)のワイルドカード同士による対戦は、02年のエンゼルスとジャイアンツ以来、12年ぶり2度目。この時ジ軍は3勝4敗で世界一を逃している。

 ◆90勝未満同士の対戦は史上初

 レギュラーシーズンで90勝に届かなかったチーム同士のWS対戦は史上初。2チーム合わせた勝率(5割4分6厘)は、73年のアスレチックスとメッツ(5割4分5厘)に次いで史上2番目に低い。

 ◆サヨナラ弾突破はナ・リーグ史上初

 サヨナラ本塁打でWS出場を決めたのはジ軍イシカワが史上4人目。ナ・リーグでは初。