<ワールドシリーズ:ヤンキース3-1フィリーズ>◇第2戦◇29日(日本時間30日)◇ヤンキースタジアム

 ヤ軍にとってイヤな空気を変えたのは、捕手モリーナの好送球で一塁走者を刺したピックオフプレーだ。0-1と1点ビハインドで迎えた4回表、先頭のワースに右前打を浴びた。フ軍に追加点が入れば一気に劣勢感が加速する場面で、モリーナが冷静な観察眼と強肩でピンチの芽を摘んだ。

 打者イバネスへの初球。一塁走者ワースのリードがいつも以上に大きいことに、モリーナは気が付いていた。カウント2-0から左打者イバネスの足元にショートバウンドしたカーブを正確に捕球すると、逆モーションながら素早い動作で一塁へ送球。ワースは逆をつかれ、戻れず、タッチアウト。「ワースが戻っていないのが見えたから投げたんだ。ラッキーだったね」。結局、この回は3人で終了し、その裏にテシェイラの同点弾が飛び出した。万国に共通する野球の流れは、目立つことの少ない隠れたファインプレーから生まれた。

 「シーズン中も、守備のことは評価されにくい。大投手や本塁打のことは取り上げられるが、我々は守備なくしてこの場所にはいられなかったはずだ」。Wシリーズ初アーチを放ったテシェイラは、自らの一打以上にプレーを褒めた。ワールドシリーズで、ヤ軍捕手がけん制で走者を刺したのは、あの伝説の捕手ヨギ・ベラが1950年、フィリーズとの対決でやって以来59年ぶりのことだった。【四竈衛】