キヨシさん、静かにお眠りを。敵地横浜にタケダの子守歌が響いた。ソフトバンク武田翔太(22)が強打のDeNA打線を3安打に抑え、ルーキー年の12年以来、3年ぶりの完封勝利を挙げた。今季5勝目、10奪三振を加えた通算65奪三振も楽天則本、日本ハム大谷に次いでリーグ3位。「日本生命 セ・パ交流戦」。DeNAを首位から引きずりおろし、今日からは巨人をたたく。

 最後も今季の決め球「ヨシボール」だった。武田はストンと落とし、最後の打者桑原を空振り三振。10個目の三振で締めくくり、会心の笑顔を見せた。

 「本当に気持ちいいですね。変化球でカウントが取れたのもありますが、野手のみなさんが、たくさん点を取ってくれたので気楽に投げられました」。完封はルーキー時代の12年9月25日オリックス戦以来3年ぶり。今季、9回0封は1度やっていた。4月8日楽天戦で9回を3安打無失点。この時は味方の援護がなく交代していたが、横浜では野手の流れに乗って自らも得点を挙げた。

 2回だ。3点を奪い、なおも1死三塁。DeNAモスコーソの145キロ直球に振り遅れながらも右前へ。プロ3打席目での初安打が4点目の適時打となった。「奇跡が起きた。ちょっと詰まったので、手が痛かった。その後の(投球への)影響はなかったです」と笑った。

 今季最多の10奪三振。昨年の阪神との日本シリーズでは、縦に大きく曲がるカーブで圧倒した。セ・リーグにはいないタイプに強打のDeNA打線も面食らった。今季はドロンと1度浮き上がらない佐藤投手コーチ直伝の「ヨシボール」を勝負球にしている。1日の投手練習でも佐藤コーチに学び、さらに磨きをかけた。「難しいんですよね。まだまだです。三振は全部狙っていました」。今季奪った三振は65とチームトップ。楽天則本75個、日本ハム大谷69個に続くリーグ3位と上位にランクインした。

 いつもニコニコ笑顔。独特の世界観を持つ右腕は、チームメートから愛情も込めて「変な子」と呼ばれることが多い。一匹おおかみタイプだが、誰よりも早起きし体のケアを行い、見えないところで鍛え続ける。器用過ぎるのが災いし、投球フォームも定まらなかった。悩みに悩んだフォームも、ここにきてキャッチボールのように軽く投げることで安定してきた。

 プロ最多の142球。工藤監督は「球数も投げたし、次が大事になる」と話す。壁を越えた武田なら、心配はなさそうだ。【石橋隆雄】