苦労人が大きな白星を運んできた。ソフトバンク細山田武史捕手(29)が、ホークス移籍後初の先発マスクで4年ぶりの安打、適時打を放った。巨人戦で4回に決勝タイムリー。DeNAを戦力外となりソフトバンクに加入した男が、チームを今季最多貯金10に導いた。

 苦労を重ねた分、喜びも大きかったはずだ。首痛の影響でスタメンを回避した正捕手細川の代わりに出場。移籍後初で、4年ぶりのスタメンマスク。そんな男にチャンスは巡ってきた。

 同点の4回だった。工藤監督は無死一、二塁から7番川島にバントで送らせ、8番の細山田にかけた。横浜(現DeNA)時代の通算打率は1割7分1厘。左翼席の鷹党からもコールは「いいとこ見せろよ細山田!」。そんなハッパにバットで応えた。初球のチェンジアップをたたいた。打球は前進守備の左翼手の頭上を越える、勝ち越しの適時二塁打。笑顔で右手を突き上げた。「ラッキー。外野がチョー前に来てたから」と笑った。さらに三塁に進み2死一、三塁で一塁走者の中村晃とダブルスチールを決めて5点目のホームも踏んだ。横浜時代の11年10月21日阪神戦以来となる先発出場で輝いた。

 13年限りでDeNAを戦力外に。トライアウトを受け14年ソフトバンクと育成契約。だが主戦場は若手を育成する3軍だった。今年4月3日に支配下登録され即登録も、再び3軍で調整した。「苦しいとか思ったことはない。野球ができればどこであれ幸せ。いつでも出られる準備はしていた」。5月24日に再び1軍へ戻ってきた。

 移籍後初安打となったボールは鹿児島の実家の仏壇へ届ける。早大4年時に父斗史郎さんが死去(享年53)、昨年末には母美智子さん(享年56)も他界した。「父と母には感謝しているので。本当はこの姿を見せたかった」。これからも1軍で活躍する姿を両親に届けることを心に誓った。【石橋隆雄】

 ◆細山田武史(ほそやまだ・たけし)1986年(昭61)4月29日、鹿児島県生まれ。鹿児島城西-早大を経て、08年ドラフト4位で横浜入団。1年目の09年に88試合に出場も、13年限りで戦力外に。トライアウトを受け14年ソフトバンクと育成契約。179センチ、74キロ。右投げ右打ち。