今季限りで現役を引退する中日谷繁元信兼任監督(44)が、横浜スタジアムで行われた引退試合に臨み、「8番捕手」でスタメン出場した。古巣DeNAの計らいもあり、試合後には異例のビジターでの場内1周。27年間の現役生活にピリオドを打ち、万感の思いで別れを告げた。

 現役最後の打席は2回に巡ってきた。2死一、二塁。カウント2-2から井納の直球をつかまえるも遊撃の正面に転がるゴロ。「小さい頃からこねるなよってオヤジに言われていたことを思い出した(笑い)」。最後をヒットで締めくくることはできなかったが、一塁まで全力で走塁。「いつも通り」を貫いた。

 ベンチ前に戻ると、花束を持ったDeNA三浦に出迎えられた。涙ぐむ3人の息子や両親を目にすると、もうこらえることは出来なかった。「僕の予想だと泣くのは長男だけだと思ってたんだけど、次男も三男もみんな泣いてましたね」。涙を流しながら、最愛の息子たちの頭を優しくなでた。

 試合が終わると「谷繁コール」が湧き起こり、ホームベース付近に両軍の選手たちが集合。引退を決意した和田、小笠原らもこの瞬間のためだけに球場に駆けつけた。5度宙を舞った主役は、その足でファンのもとに駆け寄ってあいさつ。「いい思い出になりました。本当に幸せです。もう2度とあんなコールを受けることはないだろうね」と感謝した。

 ラストゲームを終えて通算試合数は3021試合。横浜(現DeNA)と中日で計5度の優勝を経験し、史上誰よりも多く試合に出た名捕手が、惜しまれつつマスクを脱いだ。【桝井聡】