宣言通りの完投劇だった。DeNA山口俊投手(28)が、7安打1失点の今季初完投で2勝目をマークした。チームを今季初のビジター勝ち越し、さらには2カード連続の勝ち越しと上昇気流に乗せた。119球を投げ抜いたエースは「1人1人の打者との勝負に集中した。コースよりも強いストレートがいけばいいと、どんどん振らせることを意識した」。バックを信じ、テンポよく打たせてとる投球を体現した。

 雪辱を果たす舞台も平常心を貫いた。3月25日の広島戦で自身初の開幕投手としてマウンドに立つ予定だったが、オープン戦中の負傷で回避した。時は違うが、同じ舞台で同じ相手との対戦。「1日1日、進んでいる。そんなに気にはしていない」。あの時の悔しさは胸中に封じ、力いっぱいボールを投げ込んだ。

 前回登板の1日阪神戦は5点リードの7回に無死満塁のピンチを招き、114球で無念の降板。チームも逆転負けを食らった。登板の数日後にラミレス監督と話し合い「150球ぐらいは投げられる」と直訴し、「9回を投げ抜く能力がある。次回はそれぐらいはいこう」と約束された。この日は球数を要していても、ベンチのラミレス監督にはエースに試合の全てを託す覚悟があった。

 スタンドからの優しいまなざしも力になった。母啓子さん(63)が実家の大分から観戦に駆けつけた。あらかじめ球団オリジナルの青いカーネーションの宅配を手配していたが「母と義母、嫁さんが見に来ていた。勝利が母の日のプレゼントにもなって良かった」と日ごろの感謝を白球に込めた。

 プロ入り11年目で広島戦の先発は9戦目。ようやく自身初白星にこぎつけた。チーム打率トップの首位広島を完全に封じ込めた。最下位からの反撃もようやく始まろうとしている。【為田聡史】